障害のある人に対する情報保障のためのガイドライン 横浜市 目次 はじめに 3ページ 障害のある人とは 4ページ 障害のある人の情報取得・利用・意思疎通 4ページ ガイドラインの構成 5ページ ガイドラインの役割と活用 5ページ 第1章 障害の特性に応じた配慮の基本 6ページ 視覚障害のある人 8ページ 聴覚障害のある人 11ページ 盲ろう者 14ページ 音声機能障害、構音障害、吃音などのある人 17ページ 失語症のある人 19ページ 肢体不自由の状態にある人  21ページ 内部障害のある人・難病患者等 22ページ 知的障害のある人  24ページ 重症心身障害の状態にある人  26ページ 統合失調症、気分障害、不安障害などのある人 27ページ 高次脳機能障害のある人 29ページ 発達障害のある人 32ページ 色覚異常のある人 34ページ 認知症のある人 36ページ 重複障害(複数の障害を併せ有する人) 37ページ 障害のある人への配慮や対応施設に関するマーク 39ページ 第2章 場面ごとの配慮 42ページ 情報・コミュニケーションの基本的な配慮 43ページ 文書を作成するときの配慮 44ページ 文書を送付するときの配慮 46ページ 電子メールを利用するときの配慮 47ページ 窓口・受付での配慮 49ページ 対話・面談・手続の際の配慮 54ページ 会議・会合・イベント等を開催するときの配慮 60ページ 案内・表示における配慮 64ページ 福祉サービスについての情報を提供するときの配慮 65ページ 災害時・緊急時の配慮 66ページ ウェブサイト・動画等の配慮 71ページ 障害のある人への職場での配慮 73ページ ページ3 はじめに 障害者の権利に関して、平成19年9月に「障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)」への署名がなされ、平成22年には「相互に個性の差異と多様性を尊重し、人格を認め合う共生社会を実現」を掲げるとともに、「障害者制度改革の基本的方向と今後の進め方」や「横断的課題における改革の基本的方向と今後の進め方」が閣議決定されました。その後、障害者権利条約の趣旨に沿った施策の推進を図るため、障害者差別の禁止等を盛り込んだ障害者基本法の改正が行われ、平成23年8月に施行されました。 また、平成25年6月には、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が制定されました。さらに、障害者差別を解消するための具体的な対応として、国や地方公共団体等において、各機関での取組に関する対応要領(ガイドライン)の策定も進められました。 こうした国内での法整備等の状況を踏まえ、平成26年1月に障害者権利条約の批准がなされました。 本市においては、障害者差別の解消を全庁的に推進していくことを目的として、平成28年2月に障害者差別解消に関する本市の取組の基本的な考え方及び取組の内容を定めた「障害者差別解消の推進に関する取組指針」を策定しました。また、同年4月に障害を理由とする差別に関する相談の対応、あっせんの手続き等を定めた「横浜市障害を理由とする差別に関する相談対応等に関する条例(平成28年横浜市条例第3号)」を施行しました。 障害者差別解消法は、障害のある人から個々の場面において社会の中にあるバリア(障壁)を取り除くために何らかの対応を必要としていると意思の表明があった場合、行政機関等や事業者は負担が重すぎない範囲で、障害のある人にとって日常生活や社会生活を送る上での障壁(社会的なバリア)を取り除くための配慮を行うこと(合理的配慮の提供)を定めています。 必要とする配慮は、障害の状況等によって一人ひとり異なるため、合理的配慮の提供にあたっては、その人の意向を確認し、場面に応じて考え、対応していくことが重要です。本ガイドラインは、コミュニケーションに関する合理的配慮(情報保障)を提供するにあたっての必要な配慮に関する情報を掲載しています。 令和6年4月の改正障害者差別解消法の施行により、これまで努力義務とされていた民間事業者による合理的配慮の提供が法的義務になりました。本ガイドラインをご活用いただき、障害のある人に対する情報保障に役立てていただければ幸いです。 ページ4 障害のある人とは 障害者基本法及び障害者差別解消法では、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害があって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にある人のことを障害者と定義しています。障害者手帳の有無ではなく、日常生活・社会生活に困難がある人も対象になりますので、障害のある人の範囲を狭く捉えないように注意が必要です。 また、障害者差別解消法では「障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会の事物、制度、慣行、観念その他一切のもの」を社会的障壁と定義しています。 障害のある人が日常生活又は社会生活で受ける様々な制限は、障害のある人ご自身の心身のはたらきの障害のみが原因なのではなく、社会の側に様々な障壁(バリア)があることによって生じるもの(社会モデル)という視点に立ち、社会的障壁を、周囲の適切な配慮で取り除くことが大切です。 ページ4 障害のある人の情報取得・利用・意思疎通 情報通信技術が進展したことで、大勢の人がより簡単に情報を入手し、また発信できるようになりました。 障害のある人による情報取得や利用並びに意思疎通手段は、可能な限り障害の種類・程度に応じた手段を選択できるようにする必要があります。 また、障害のある人が日常生活・社会生活を営んでいる地域にかかわらず等しく情報取得・利用・意思疎通ができるようにするためには、関係機関と連携した取組みが求められています。 もちろん、障害を理由としてコミュニケーションを断つことは、障害のある人に対する不利益な取扱いになり得ます。 さらに、障害のある人は、情報があること自体を把握することができない場合や自ら求めることができない場合もあるということを理解しておく必要があります。 ページ5 ガイドラインの構成 第1章では、障害特性に応じた配慮の基本について記述しています。 第2章では、場面ごとに求められる配慮を整理し、具体的に記述しています。 ページ5 ガイドラインの役割と活用 障害のある人もない人も共に暮らしやすい社会を築くには、情報のやりとりを行う際に、障害のある人が障害のない人と同一内容の情報を同一時点において等しく取得できるようにすることが求められます。ここでは、この考え方を情報保障としています。情報保障のためには、障害のある人の特性に応じた配慮が必要です。 障害者差別解消法においては、障害のある人から求めがあった場合に限って合理的な配慮の提供が義務づけられていますが、どのような配慮ができるかあらかじめ示し、配慮を求めやすいようにすること、また、求めがなくても配慮を行うことができるよう、このガイドラインをご活用ください。 ページ6 第1章 障害の特性に応じた配慮の基本 この章では、障害の特性について記述し、それぞれに求められる基本的な配慮についてまとめています。場面ごとの配慮については第2章で説明しています。 ほんの少しの気配りや気遣いでも、障害のある人の直面している困りごとを解決する大きな力になります。まずは、できることから順番に実践していきましょう。 配慮の大原則 障害の特性を理解し、障害のある人の立場に立って考える。 情報の重要性を認識し、障害の有無にかかわらず実質的に同等の情報のやりとりが速やかに行えるよう努める。 必要な配慮や手段はその人ごとに異なることに留意し、意向を確認して柔軟に対応するようにする。なお、ガイドラインの内容の押しつけにならないよう注意する。 障害のある人の人格を尊重し、プライバシーや誰にも言えないコンプレックスなどにも配慮する。 情報をやりとりする際、単一の方法では特定の障害のある人が情報を利用できないことがあるので、可能な限り複数の方法を用意するよう努める。特に、生命・身体や福祉サービスに関する情報、権利の取得又は喪失に関する情報など、重要な情報のやりとりにあたっては、あらかじめ複数の方法を用意する。 障害の状況により、意思疎通支援(注釈1)をしても困難な場合もあることを理解し、意思決定支援(注釈2)などのサポート方法を用意する。 注釈1 意思疎通支援とは、聴覚、言語機能、音声機能その他の障害のため、意思疎通を図ることに支障がある障害者とその他の人の意思疎通を支援することをいう。 注釈2 意思決定支援とは、自ら意思を決定することに困難がある人が、日常生活や社会生活に関して自らの意思が反映された生活を送ることができるように、可能な限り本人が自ら意思決定できるよう支援することをいう。 注釈は以上です。 在宅で生活している人には家族や身近な支援者の支援や配慮も欠かせないことから、制度やサービスを広報・周知する際には、家族・支援者・団体等、本人以外にも必要な情報が伝わるよう配慮する。 本人の意思で物事を決めること(自己決定)を意識する。分からない、伝わらないと決めつけず、本人に適切な方法で伝わるよう努める。 ページ8 視覚障害のある人 視覚障害は、視力、視野など、「見る」機能についての障害です。以下のように、人によって見え方は様々です。 全盲 全く見えない。 弱視 ぼやける、細かい部分がよく分からない。 視野障害 見える範囲が限定される。 視野の周囲や中心視野の欠損、右又は左半分など一部が見えず、移動や生活動作に障害がある、周囲が見えず移動に障害があるが手元の文字は見える、文字は見えないが移動は可能である、など。 光覚障害 暗いところで極端に視力が低下する、又は他の人にはまぶしくない程度の明るさでも過敏になる 視覚から情報を得られず他の感覚を活用する人もいれば、適切な配慮や器具によって視覚の一部を活用できる人もいます。 先天的または早期に障害のある場合と、視覚を活用して生活していた人が後天的に視力・視野が障害される場合(中途視覚障害)とがあり、活用できる能力・手段と必要とされる配慮はその人の生い立ちや環境によっても異なります。 主な特性と配慮のポイント 全盲の人は、音声や点字など、主に聴覚や触覚により情報を得ているので、その人に応じた方法で情報を提供する。 弱視(ロービジョン)の人は、音声などのほか、拡大文字や専用機器などを利用して視覚からも情報を得ているので、その人に応じた方法で情報を提供する。 点字は重要な情報伝達手段だが、中途視覚障害者を中心に、点字の読み書きができない人も多くいるので、音声や利用しやすい電子データなど、点字以外でも情報を提供する。 他の人による代読・代筆を利用することもあるので、必要としている範囲で情報を提供する。なお、自署ができる人もいるので、本人に確認する。 白杖や盲導犬を利用して単独で移動できる人もいるが、そのような人でも不慣れな場所では移動の際に案内や誘導の配慮を必要としている。 パソコンやスマートフォンの音声読み上げ機能を利用して情報を入手したり、入力した文章を送信できる。視覚障害のある人にとっての重要な情報のやりとりの手段になってきており、この方法は、その人の状況に応じて活用する。 視覚障害のある人のコミュニケーション手段 点字 指先で触れて読む文字で、6つの点の組み合わせで表現されています。 縦3個、横2個の6つの点が一つの単位(マス)で、凸状の点の有無の組み合わせで五十音や数字、アルファベット、記号を表しています。 点訳を請け負う団体・事業者があるほか、点訳ソフトと点字プリンタを備えたパソコンで点字文書を作成することもできます。 ここに図があります。 よこはま、を点字で表した図で、下に「点字の例」と書かれています。 ここで図は終わりです。 拡大文字 弱視の人が読めるよう、大きなサイズの文字で印刷します。行間、字間、書体、字の太さなどにも配慮が必要です。 音声コード 小さな白黒の点の組み合わせで構成される二次元コードで、数百文字の情報が収録されています。印刷物に貼り付けることで、専用の読み取り装置や、音声コードリーダーが搭載された携帯電話、対応アプリをインストールしたスマートフォンを利用してコードを読み取り、収録内容を音声で読み上げさせることができます。 (46ページ参照) 46ページには、音声コードが使用されている水道料金のお知らせの画像が掲載されています。 スクリーンリーダー パソコンやスマートフォンなどで利用するアプリで、画面の表示内容や選択状況、ユーザの操作等を合成音声で読み上げます。また、特にウェブサイトの閲覧・操作を行うための音声ブラウザと呼ばれるソフトもあります。 点字ディスプレイ パソコン画面の表示内容やテキストデータなどを点字で表示する機器です。多数のピンの浮き上がりで点字を表示する仕組みで、携帯できるものもあります。 (48ページ参照) 48ページには、点字ディスプレイの写真と説明文が掲載されています。 ページ11 聴覚障害のある人 聴覚障害は、聴力を中心とする「聞く」ことはもちろん、会話をする、情報を得る及び情報を伝えることが困難な障害です。 聴覚障害の状況は人によって異なり、全く聞こえない人も、補聴器なしで会話が聞き取れる人もいます。先天的に障害がある場合と、聴覚を活用して生活していた人が後天的に聴力を失う場合(中途失聴)とがあり、活用できる能力・手段と必要とされる配慮はその人の生い立ちや環境によっても異なります。 聴覚障害のある人のうち、手話を言語として日常生活又は社会生活を営んでいる人を「ろう者」といいます。 主な特性と配慮のポイント 外見から障害が分かりにくいため、声をかけたのに返事をせず無視されたと誤解されることもある。発声・発語できる人もいるが、そのために聴覚障害がない、聞こえていると誤解されることがある。 発声・発語が困難な人は、音声以外の方法を使う必要がある。 音声の代わりに文字や図などで情報を提供すると、視覚から情報が得られる。 音声での会話以外に、手話(注釈1)、要約筆記(注釈1)、触手話、指点字、筆談、キュードスピーチなどの方法がある。(12から13ページ参照。12から13ページには、聴覚障害のある人のコミュニケーション手段が掲載されています。) 複数を併用する場合もあるが、人によって利用できる方法は異なるため、障害のある人が複数いる場合にもお互いのコミュニケーションが行えるよう留意する必要がある。 注釈1・手話、要約筆記 手話通訳や要約筆記においては、手話通訳士倫理綱領により通訳として触れた内容を第三者には漏らさないという守秘義務が課されている。 手話通訳者や要約筆記者は、情報を伝える支援者であり「第三者」「保証人」「ヘルパー」と役割が異なることに留意する。 注釈は以上です。 難聴者では、補聴器や人工内耳を利用して聴力を補う人もいる。音としては聞こえていても言葉として認識できないこともあるので、内容が伝わっているか確認するよう配慮する。軽度の難聴では、静かな場所では聞き取れても、騒がしい場所ではまったく聞き取れなくなることもある。 聴覚障害がある人は、相手の口の動きや表情を見て話を理解することもあるため、適切な距離を確保できる場合等には、口の動きが見えるようにマスクを外してコミュニケーションをとる。または、マスクに代えてフェイスシールドや透明アクリルシート(透明なマスク)等を用いる。 補聴器を使っている人には、近づいて、正面から普通の大きさの声で話しかける。3メートル以上離れると補聴器は音を拾わなくなる。 片耳が聞こえにくい人には、正面もしくは、聞こえる側から話しかける。相手が気づくような合図をしてから話しかけるとよい。 加齢による難聴がある人は、大きな音がかえって聞き取りにくい場合があるので、大声を出すのではなく、正面から口元を見せてゆっくり・はっきり話しかける。 聴覚障害のある人のコミュニケーション手段 手話 手指の動き(指さしを含む)や眉・目・口などの表情などを使って概念や意思を視覚的に表現する視覚言語です。ろう者は、手話を言語として日常生活を送っています。 手話は音声言語(日本語など)とは異なる言語体系を持ちます。名詞・動詞ではなく五十音、数字、アルファベットなど、音声言語の文字そのものを表現する場合には、手指の形や動きで表現する指文字が使われます。 手話通訳者は、手話と音声言語の両言語間を通訳し、それぞれを使う人の間でのコミュニケーションの橋渡しをします。手話通訳者を介してろう者と対話をする場合であっても、ろう者本人を正面から見て話します。 要約筆記 その場の音声をその場で要約等の技法を使い同時性をもって、文章で示し、聴覚障害のある人に伝える方法です。手で書いて伝える手書き要約筆記と、パソコンで入力して伝えるパソコン要約筆記があり、それぞれに、ノートテイクと全体投影という手法があります。ノートテイクは1〜2名の聴覚障害者に対して、紙やパソコン画面で文章を見せる方法、全体投影はスクリーンを立てて文章を投影し、大勢の人が一度に見ることができる方法です。 触手話 相手の手話を聴覚障害者が触って読み取る方法です。また、相手が聴覚障害者の手を取って手話の形を作って伝える方法もあります。 指点字 聴覚障害者の両手の指(人差し指、中指、薬指)6本を点字の6点に対応させ、通訳者が聴覚障害者の指に打って伝えます。 筆談 紙と筆記具や筆談具、タブレット端末などを利用して、互いに文字を書いてコミュニケーションを行う方法です。 読話・口話 読話は、話し手の唇の動きや表情から状況を推測して話の内容を読み取る方法です。読話と、訓練により音声で話せるようになる発語を用いてコミュニケーションを行う方法を口話といいます。読話は集中力を必要とするため極度の精神的疲労を伴い、また確実さにも個人差があります。 そのほかに、母音の口形とともに手指のサインで文字を表現するキュードスピーチが、口話を補助する方法として使われることがあります。 キュードスピーチ 日本語の音韻を「ア・イ・ウ・エ・オ」という五つの 母音の口形とキューサインとの組み合わせによって表しながら話す方法のことをキュードスピーチといいます。キューサインとは、日本語の子音の音素レベルを表す記号(キュー)を手指の位置や形で表したものです。 ページ14 盲ろう者 盲ろう者とは、視覚と聴覚の両方に障害のある人のことです。全く見えず全く聞こえない人もいますが、見えにくく聞こえにくい人も盲ろう者に含まれます。一般には、以下の4つに分けられます。 全盲ろう 全く見えず、全く聞こえない。 全盲難聴 全く見えず、聞こえにくい。 弱視ろう 見えにくく、全く聞こえない。 弱視難聴 見えにくく、聞こえにくい。 障害の発生時期や障害の程度、活用できる感覚により、情報の取得方法、コミュニケーションの方法は異なるので、それぞれ個別に対応する必要があります。 視覚・聴覚のいずれかの障害が先行していた人もいれば、先天性の盲ろう者、成人期以降に視覚・聴覚両方の障害を生じた人もいます。成人してから点字や手話を学ぶには大変な努力が必要なので、手のひらに文字を書く、紙に大きな字を書いて筆談するなどの手段を用いることもあります。 盲ろう者には、コミュニケーション、外出(移動)、情報収集のいずれにも困難さがあります。社会とのつながりを保ち、娯楽や会話などの楽しみ、外出機会などを確保するためにも、盲ろう者向け通訳・介助員によるサポートが不可欠です。 主な特性と配慮のポイント 盲ろう者は視覚・聴覚の両方に障害がある。各々の障害のある人に対する配慮と同様の配慮が有効な場合もあるが、下記のように盲ろう者特有のコミュニケーション手段もあることに留意する必要がある。 弱視や難聴の場合、適切な配慮や環境があれば視覚や聴覚も活用できる。 盲ろう者が情報を得るには、活用可能な感覚に応じて、触手話、弱視手話、指文字、指点字、点字、手のひら書き、音声、筆記、パソコンなどを活用しているので、その人に応じた方法で応対する(次のページ参照。次のページには、盲ろう者のコミュニケーション手段が掲載されています。)。 盲ろう者が意思を表す際、音声で話せる人は音声を活用することが多い。それ以外に、手話や指文字などで意思を表す人もいる。 聴力の残っている盲ろう者に話しかける場合、向かい側からではなく、聴き取りやすい方の耳の真横から向かって話すようにする。 盲ろう者のコミュニケーション手段(情報を得る場合) 触手話 相手の手話を盲ろう者が触って読み取る方法です。また、相手が盲ろう者の手を取って手話の形を作って伝える方法もあります。 弱視手話 視力の残っている盲ろう者が用います。盲ろう者が読み取れるよう、視力や視野に適した位置や大きさで手話を表現して伝えます。 指文字 手指の形で五十音やローマ字を表現します。視覚で読み取る場合と、触って読み取る場合とがあります。 指点字 盲ろう者の両手の指(人差し指、中指、薬指)6本を点字の6点に対応させ、通訳者が盲ろう者の指に打って伝えます。 点字 その場で点字器や点字タイプライタを使って書いた点字を、盲ろう者が読み取ります。また、パソコンに接続した点字ディスプレイを利用する人もいます。 手のひら書き 盲ろう者の手のひらに指で文字を書いて伝える方法です。盲ろう者の指を持ってもう片方の手のひらや机などに書く方法もあります。 音声 聴力が残っている場合に、聞き取れる耳や補聴器に向かって音声で話しかけます。 ただし、大声で話しかけると痛みを感じる人もいるので、声の大きさより、ゆっくり、はっきりと話すことが必要となります。 筆記 視力が残っている場合に、紙とサインペンなどを利用して、見やすい大きさ、太さ、間隔、コントラストで書いて伝えます。 パソコン画面 視力が残っている場合に筆記の代わりにパソコン画面を利用して伝えます。文字の大きさや色、コントラスト、明るさ等が調節しやすく手書きよりも早く書けます。 ページ17 音声機能障害、構音障害、吃音などのある人 言葉を発する際の障害として、音声機能障害、構音障害、吃音などがあります。 音声機能障害 音声機能障害とは、喉頭(のど)や発声筋等の音声を発する器官に障害があるため、音声や発音、話し方に障害がある状態のことです。 例えば、無喉頭、がん等による喉頭の摘出手術、発声筋麻痺などにより音声が出ない場合などがありますが、訓練により食道発声をしたり、人工喉頭を使用したりして会話ができるようになる人もいます。また、肢体不自由の状態にある人の中にも、発語にかかわる運動機能の障害によって話し方が不明瞭になる人がいます。 構音障害 構音障害とは、構音器官(口唇、舌、下顎、口蓋等)の障害又は形態異常により、発音(構音)が不明瞭になる状態のことです。構音障害には、唇顎口蓋裂の後遺症による口蓋裂構音障害、末梢神経及び筋疾患に起因する舌、軟口蓋等の運動障害による構音障害、舌切除等による構音器官の欠損によるもの、中枢性疾患による運動障害性構音障害、脳性麻痺構音障害等があります。文字盤の使用や筆談ができる人が多く、画面上の文字盤をタッチして音声出力させるアプリを使用している人もいます(トーキングエイドなど)。流涎や嚥下障害など、発語以外の障害がある人もいます。 吃音 吃音とは、話し言葉が滑らかに出ない状態のことです。吃音の症状には、音の繰り返し(連発)、引き伸ばし(伸発)、言葉を出せずに間が空いてしまう(難発・ブロック)などがあります。 吃音の状態には波があり、比較的スムーズに話せるときもあれば、言葉が出にくくなるとき、出なくなるときもあります。他の人から注視・注目されるなどの緊張も影響します。二次障害として、社交不安障害を生じることがあります。 主な特性と配慮のポイント 外見からだけでは、発語に支障があることは分からない場合が多い。また、障害の内容が詳しく知られていないこともあり、違和感を抱かれたり、不適切な対応をされてしまったりすることがある。 音声機能障害のある人との会話は、静かな場所で対応し、落ち着いて話せるように、ゆっくりと話しかける。五十音表や筆談が利用できる人もいる。ファックスや電子メールで遠隔地の障害のある人ともやり取りができる体制を整える。 人工喉頭や食道発声を用いる人は、喉や首に器具や手を当てるために片手を常に使用している場合が多く、特に電話でメモを取ることが難しい。 吃音をはじめ発話に困難がある人は、名前や住所など大切なことを伝えるときには、次の音や言葉が出るまで時間を要することがあり、緊張するとさらに言葉が出なくなることもあるので、本人のペースに合わせて対応する。 筆談や手話等、別の手段の希望があれば配慮する。 ページ19 失語症のある人 失語症は、脳の言語中枢が脳梗塞等の脳血管疾患や頭部外傷などにより損傷されることによって起こる言語障害です。これまで自由に行えていた「話す」、「聞いて理解する」、「読む」、「書く」など、言語を使用する機能に障害が起こります。脳の損傷部位や広がりにより、症状や重症度は異なります。 複雑な内容や長い文章は理解されにくく、仮名より漢字の方が理解されやすいのが一般的です。言いたい言葉が思い浮かばなかったり、違う言葉を言ってしまったりする場合は、聞き手が選択肢を示したり、「はい」、「いいえ」で答えられる質問をしたり、急がせたり焦らせたりせずゆっくり返事を待つようにすると、意思表示が容易になります。また、話し言葉だけに頼らないで、身振りや文字、イラスト、図、カレンダーや地図などを利用すると、コミュニケーションがとりやすくなります。 聴力や音声機能に障害があるわけではありません。 発症後も、その人らしさや人格、知的機能や状況の判断、社会的礼節、これまでの記憶等は保たれていますが、こうしたことが会話からは分かりにくいため、障害が理解されにくく、適切な対応がされないことがあります。 神奈川県では、外出先のコミュニケーションを支援する失語症者向け意思疎通支援者の養成講習会を行っています。また、神奈川県言語聴覚士会が窓口となり、失語症者向け意思疎通支援者の派遣事業を実施しています。 主な特徴と配慮のポイント 言語機能(「話す」、「聞く」、「読む」、「書く」)の一部、あるいはすべてに機能の低下、障害がある。 大脳の損傷部位や広がりによって失語症の症状や重症度が異なる。 軽度では会話のやり取りはおおよそ可能だが、時々聞き誤りがあり、言いたい ことを簡潔に分かりやすく伝えることが難しい。 中等度では、簡単な日常会話のやり取りは可能だが、長い文の理解や発話が難しくなる。 重度では、独力で他者に何かを伝えること、困っていることを自ら伝えることができなくなる。日常会話の理解も困難である。 身体の右側の運動麻痺や感覚障害を伴うことも多い。 視野障害により、右側にあるものが見えにくくなったり、右半側空間無視により、右側に注意が行かなくなることがある。 相手が安心できるような態度、対等な立場で話す。 話しかける時は、文節ごとで区切り、短い文で簡潔に、ゆっくり話す。 同時に、要点を箇条書きにして文字で書くと、理解しやすい(この方法を「要点筆記」という)。文ではなく、単語で書き、日常的に漢字で表記されるものは漢字で書く。 仮名より漢字の方が理解されやすく、五十音表は指差しによる伝達では理解が難しい。 絵や記号(まるばつ、矢印、顔文字等)、カレンダー、地図、身振り等を活用する。 相手が話そうとしているときは、途中で言葉に詰まっても、口を挟まないで、じっくりと待つ。 どうしても言葉が出てこない時は、「はい」、「いいえ」で答えられる質問をしたり、選択肢を示したりして、言いたい言葉を引き出すようにする。 書くことは話すこと以上に困難な場合が多い。単語の一部や絵を書いて伝えようとする人もいるので、筆記用具は準備しておく。 話の内容に行き違いがなく、適切に理解し合っているか確認する。 特に数字は行き違いが生じやすいので、書いて確認することが必須である。 ページ21 肢体不自由の状態にある人 肢体不自由とは、四肢(手や足)や体幹などの機能の一部または全部が、病気や怪我などで損なわれ、長期にわたり、歩行や食事、入浴等の日常生活動作に困難が伴う状態をいいます。 上肢や体幹に機能障害があると、細かいものをつかみ握ること、字を書くこと、書類や冊子のページをめくること、小さなボタン・スイッチ・タッチパネル・キーボード・マウスを操作することなどに支障が生じる場合があります。 また、発声に関する器官の麻痺や不随意運動などにより、音声でコミュニケーションを取ることが困難な場合もあります。 下肢や体幹に機能障害のある人の移動については、歩行補助つえや松葉杖を使用する人、義足を使用する人、車いすを使用する人など様々で、段差や階段、通路の幅などにより移動に支障が生じる場合があります。 また、病気や事故で脳に損傷を受けた人の中には、身体の麻痺や機能障害に加え、言葉の不自由さや記憶力の低下、情緒の不安定さなどを伴う人もいます。 主な特性と配慮のポイント 車いすを使用している人のために、車いすのまま机の下に足が入るようにするなど、窓口や机などの構造・位置に配慮する。 その人に応じた読み書きの際の代読・代筆や手助けなどを行う。 移動、読み書き、会話などに他の人より時間を要することもあるので、時間に余裕を持って応対する。 移動そのものや食事・トイレなどの制約から、外出機会が限られる場合もあるので、対面以外の手段を用意するなどの配慮が必要である。 ページ22 内部障害のある人・難病患者等 内部障害とは、肢体不自由以外の体の内部の障害で、心臓機能、腎臓機能、呼吸器機能、膀胱・直腸機能、小腸機能、HIVによる免疫機能、肝臓機能のいずれかの障害により日常生活や社会生活に支障がある状態です。 また、症状が重く治療方法が確立していない難病等を患っている人も、程度や様態は様々であるものの、日常生活や社会生活に支障があります。 ALS(筋萎縮性側索硬化症) 難病の一つで、発症すると筋肉の萎縮と筋力の低下が急速に進行します。個人差はありますが、早い人では数年で自発呼吸が困難になり、人工呼吸器などの医療的ケアが必要になることがあります。舌・喉の筋肉が動かなくなり、手足も麻痺することで意思の表明が困難になる一方、視覚や聴覚などの知覚、記憶や知性を司る神経は維持されるので、見聞きしたり考えたりすることは引き続き可能です。 声が出せなくなったALS患者の人が意思を表明するには、残された能力に応じて様々な手段を活用します。 通訳 訓練を受けた通訳者が、目や口元のわずかな動きなどを読み取って、他の人に伝える。 文字盤 手や足の指を活用して、文字盤の文字を指し示したり、音声合成装置のスイッチを押す。視線の動きで文字を指し示す透明文字盤もある。また、頻繁に利用する用事などの単語をカードにすることもある。 意思伝達装置 パソコン等を利用した専用機器で、指や目など体のわずかな動きで入力スイッチを操作して、文字や文章を作成するなどして意思を伝える。体が動かなくなった場合に使えるよう、脳の血流量や脳波を活用した意思伝達装置もある。 内部障害や難病の主な特性と配慮のポイント 内部障害は、外見からは障害のあることが分かりにくい場合もある。 疲れやすい人や、長時間立つことや歩くことが困難な人、医療的ケアやオストメイト対応トイレを必要とする人もいる。 五感や体の機能に障害がある場合は、その人の状況に応じた配慮を行う。 様々な制約から外出機会が限られている場合もあるので、情報を得にくくならないよう配慮が必要である。 同じ障害や疾病のある人で構成する患者会や家族会などの当事者団体が、その人にとって重要な情報源になっていることが多い。 その人の状況・症状などを総合的に理解し、利用できる給付やサービスなどの情報収集に努めるとともに、場合によっては他の行政機関や医療機関などにも問い合わせるなどの連携も必要である。 ここに図があります。 タイトル:透明文字盤の例(東京都立神経病院リハビリテーション科作成) 五十音と簡単な言葉の2種類の文字盤の図の下に説明文が書かれています。 説明文:この文字盤を透明な板などに印刷し、利用者(患者)の目と介助者の目との間にかざします。利用者の目の動きに合わせて介助者が文字盤を動かし、視線が合ったところの文字を指すことで文字によるコミュニケーションが可能になります。 図と説明文はここで終わりです。 ページ24 知的障害のある人 知的障害とは、知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)に認められ、日常生活又は社会生活に支障が生じている状態をいいます。障害の程度により必要な援助の内容や量は異なります。 知的障害のある人は、複雑な事柄や抽象的な概念の理解が苦手です。込み入った文章や会話の内容を把握することが不得手なので、説明の方法に配慮をしましょう。   主な特性やそれに応じた配慮としては下記のようなものがあります。 ただし、人によって能力は異なり、また練習や訓練によってこれらの障害をある程度克服している人もいます。知的障害は個別性が高いので、あらかじめどのような配慮が必要か確認することが重要です。 主な特性と配慮のポイント 漢字の読み書きや、買物のお釣りのやりとりのような計算が苦手な人もいる。 人に質問したり、言葉で自分の気持ちを伝えたりすることが難しいため、状況に応じてコミュニケーションボードを活用するなど、その人の伝えたいことを理解するように努める。 周囲の状況の理解、未経験のできごと、急な状況変化に対応することが難しいため、緊急時や災害時には特に配慮が求められる。 一つの行動にこだわったり、同じ質問を繰り返したりすることがあるので、繰り返し丁寧に応対することが必要である。 コミュニケーションボード 知的障害や発達障害があり、言葉によるコミュニケーションが難しい人に対して、絵や記号、簡単な図を使って説明や意思表示などのやりとりができるようにしたものがコミュニケーションボードです。 コミュニケーションボードは様々な団体などが作成・提供しています。また、最近ではタブレットなどのアプリでも同様の機能を持つものが開発されています。 ここに図があります。 タイトル:コミュニケーション支援ボードの例 セイフティーネットプロジェクト横浜が作成したコミュニケーションボードの一つを図で掲載しています。 お店の人とやり取りするためのコミュニケーションボードです。 図の下に、下記「セイフティーネットプロジェクト横浜」ホームページからダウンロードできます。という文とURLが記載されています。 URL https://safetynet-yokohama.jp/tool.htm ここで図と説明文は終わりです。 ページ26 重症心身障害の状態にある人 重症心身障害とは、重度の肢体不自由と重度の知的障害が重複している状態をいいます。食事や水分補給、排泄、入浴、移動など、日常生活のほとんどすべてにおいて援助が必要です。 主な特性と配慮のポイント 声が出せても会話で意思を伝えることは難しい。口や目の動き、身振りなどを用いて意思を伝えるが、日常的に介護している人でないと読み取りづらいこともある。 日常的に医療的ケアが必要であり、胃ろうや人工呼吸器を装着しているため、常に医師の管理が必要な人もいる。 在宅で介護している場合、保護者の外出機会が限られることから、情報を得にくい場合があるので、家族や支援者へ情報提供するなど、情報提供の対象や方法に配慮が必要である。 ページ27 統合失調症・気分障害・不安障害などのある人 精神障害のある人は、様々な精神疾患により、日常生活や社会生活のしづらさを抱えています。心の敏感さ、繊細さへの配慮が必要です。 適切な治療・服薬と周囲の配慮があれば精神疾患の症状をコントロールできるため、大半の人は地域社会の中で生活しています。 主な精神疾患 統合失調症 人口の約1%の人々が罹患する精神疾患で、発症の原因はよく分かっていないが、比較的一般的な病気である。幻覚や妄想などの陽性症状、意欲低下や感情表出の減少などの陰性症状、集中力・記憶力、計画の立案、問題を解決する力などが低下する認知機能障害が主な症状だが、その他にも様々な生活のしづらさが障害として表れることが知られている。 気分障害 主なものに「うつ病」がある。気分が落ち込み、何事にも興味を持てなくなる、だるさを感じるなどの症状が続き、日常生活に支障が現れる。15人に1人が生涯に一度はうつ病を経験する可能性があるという報告がある。 また、「双極性障害」では、気分が上がりすぎる「躁」の状態と、気分が落ち込んでしまう「うつ」の状態を繰り返す。 不安障害 主なものに「パニック障害」がある。突然の激しい動悸、胸苦しさ、息苦しさ、めまいなどの身体症状を伴った強い不安に予期せず襲われる(パニック発作)。このため、また発作が起こるのではないかと強い不安(予期不安)が続き、発作が起きたときに逃げられず助けが得られない状況や場所を恐れる(広場恐怖)ようになり、日常生活に支障をきたす。うつ病と併存する人が多いという調査結果がある。 てんかん 大脳の神経細胞が過剰に電気発射を起こすことで生じる。生じる発作は、脳のどの範囲で電気発射が起こるかによって異なる。てんかん発作の大半は一過性であり、適切な処置をすれば5分から20分程度で回復する。1,000人に5〜8人の患者がいるとされる。薬により約8割の人は発作をコントロールできると言われている。 主な特性と配慮のポイント 症状は疾患ごとに異なり、時期や個人でも差異があるので、その人に応じた配慮を心がける。 ストレスに弱く、疲れやすい人が多い。 人と対面することや、対人関係、コミュニケーションを苦手とする人もいる。 外見からは、障害のあることが分かりにくい。 過大な情報を一度に説明されると理解が難しくなることがある。 緊張して上手に話せない人もいる。 周囲から障害について理解されず孤立している人や、病気のことを他人に知られたくないと思っている人もいる。 警戒心が強くなったり、自分に関係ないことでも自分に関係づけて考えてしまったりする人もいる。 若年期の発病や長期入院のために社会生活に慣れていない人もいる。 ページ29 高次脳機能障害のある人 高次脳機能障害とは、事故や病気等で脳に障害を受けたことが原因で、言語・注意・記憶・遂行機能・社会的行動などに障害が生じ、社会生活への適応に困難を示す状態です。 具体的には以下のような症状がありますが、どの症状がどの程度現れるのかは人によって異なります。 注意障害 注意を、持続する、切り替える、複数のことに同時に向けることが難しくなる症状。例えば、気が散りやすい、一つのことに長く集中できない、一つのことが気になると切り替えられず、いつまでも気にしてしまう、一度に二つのことをしようとすると混乱するなど。 記憶障害 新しいことが覚えにくくなる症状。例えば、今日の日付が分からない、自分のしたことや言ったことを忘れる、一日の予定が覚えられない、何回も同じことを聞くなど。 遂行機能障害 計画を立てること、実行することが苦手になる症状。例えば、目的地までの所要時間の見当がつかない、指示してもらわないと何から始めてよいか分からない、行動が行き当たりばったりになるなど。 感情と社会的行動の障害 感情や行動を場に合わせてコントロールすることが苦手になる症状。例えば、ちょっとしたことに怒りっぽくなる、場に合わないところで笑ってしまう、やる気が出ない、欲求が抑えられない、場違いな行動や発言をするなど。 易疲労性 脳損傷により発症前より容易に脳が疲労する症状。例えば、よくあくびをする、すぐボーッとする、日により時間により調子の波が大きい、同じことができたりできなかったりするなど。 半側空間無視 大脳損傷では「半側空間無視」の症状が生じることがある。視野が欠けているわけではないのに、右または左側に注意がいかないため、見落としたり身体をぶつけたりするなど。 主な特性と配慮のポイント 外見からは、障害のあることが分かりにくいので、適切な理解や配慮が得られない場合がある。生活の中での具体的な状況を確認しながら、何に困っているのかを聞く。 本人も障害を十分認識できていない場合も多く、また、中途障害であることから自身の障害を受け入れられないこともあり配慮の申出が難しい。 具体的に生活状況を確認しながら、“困ったことはありますか?”ではなく、“何々のようなお手伝いがあったらもう少し楽に生活できますか?”と、具体的に聞く。 障害は、在宅での日常生活、職場、学校、買い物、事務手続、交通機関利用など、社会活動場面で出現しやすい。病院では環境が限定されているため、医療従事者は気づかないこともある。本人の話だけでなく家族(状況が許せば、職場、学校関係者)からも話を聞く。 社会的行動の障害がある人の中にはこだわりの強い人や、マナー・ルール違反を特に嫌がる人もいる。 こだわりを受け止めた上で、適切に対応する。 注意障害や記憶障害などの症状により頭の中の情報処理に時間がかかるため、一度に把握できる情報量が減っている可能性がある。 情報を伝えるときは、情報を絞って、ゆっくり、一つずつ伝える。 半側空間無視の症状がある人は、症状がある側に置かれたものを認識できないことが多い。できるだけ症状がない側に物を置いたり、症状がある側の情報を指し示したり、声掛けしたりして注意喚起する。 記憶障害のある人は、会話の内容を忘れてしまうこともあるので、要点をメモにして書いて渡すようにする。スマートフォン等の写真や動画による記録、スケジュール機能やアラーム機能の活用も、記憶を補うのに役立つ。 注意障害のある人との会話は、静かで、視覚的にも刺激の少ない環境で行い、会話に集中できるようにする。 易疲労性があると、集中力が続かず、同じ誤りを繰り返したり、指示が理解できなくなってしまうことがある。話題を切り替えたり休憩を取ったりして、気分転換を図る必要がある。 ページ32 発達障害のある人 発達障害とは、主に脳機能の障害であり、その症状が通常低年齢(18歳くらいまで)で発現するもので、しつけや性格に起因するものとは異なります。発達障害のある人はコミュニケーションが苦手で、発達障害の適切な理解が得られずに周囲の不適切な対応が原因で二次障害が生じる場合もあります。 自閉スペクトラム症(ASD) 他人との社会的関係の形成の困難さ、言葉の発達の遅れ、興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害をいい、早期発見・早期支援が重要である。 呼びかけられても振り返らない、相手と視線を合わせようとしない、人の表情や感情を読み取れない、おうむ返しをする、独り言が多い、要望を言葉で伝えられずに人の手を引っ張るなど、他人との関わり方や会話に支障がある。 道順、手順、日課、物の置き場所などの決まりごとを変更すると不安を感じる。 知的発達の水準は様々で、知的発達や言葉の発達の遅れを伴わない場合もある。 人の気持ちを理解するのが苦手で、関心のあることばかり一方的に話す人もいる。 知的発達や言葉の発達の遅れを伴わない場合には、社会に出て人間関係に支障が出てから初めて気づく場合がある。 限局性学習症(LD) 全般的な知的発達に遅れはないものの、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち、特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指す。適切な支援や配慮が用意されたことで学習に取り組めるようになる人もいる。 学習障害の場合、従来の方法では学習が困難である。学習できないのは本人の怠惰によるものではないので、努力不足と責めないことが大事である。 注意欠如・多動症(ADHD) 年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力や多動性、衝動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすことがある。 忘れ物が多い、時間や物の管理ができない、集中力が続かない、じっと座っていられない、衝動的に行動するなどの障害があるが個人差が大きい。 主な特性と配慮のポイント 相手の意図がくみ取りにくい。 例:自分の思っていることと相手の理解とが違っていることが分からない。 対応:説明者の意図が伝わっていない可能性を考慮して応対する。 言語的コミュニケーションが苦手。 例:会話を続けることが苦手。 対応:質問をしたら必ず相手の答えを聞くなど、会話のルールを明確に示す。 感覚過敏 例:騒がしい場所が過度の刺激になる。 対応:落ち着いた環境を用意する。 こだわりがある。 例:マナー・ルール違反が許せない。 対応:こだわりを受け止めた上で適切に応対する。 読みの障害があると、文字の理解に時間がかかるため、配慮が必要な場合がある。 発達障害のある人の中には、たくさんの人がいる場所などで対応しているとパニック症状を起こす人もいる。この場合、場所を変え落ち着くまでクールダウンの時間をとり、落ち着いた後に対応するか、再開するか、日を改めるか、本人に意向を確認した上で対応する。 ページ34 色覚異常のある人 パソコンやスマートフォンの普及、印刷技術の進歩によって、私たちの社会では「色」を利用することでより豊富な情報を扱うことができるようになりました。しかし、色の感じ方は人それぞれに違いがあります。特定の色の組み合わせが見分けづらい「色覚異常」は、障害としては扱われないことが多いものの、色の見え方が異なる少数派の人が社会生活の中で不便を感じるという点では、障害のある人への配慮と同様の対応が必要な場合があります。 なお、色覚異常であっても色の見分けが全くつかない人はごくわずかであり、大半の人は適切な配慮によって色による情報を利用することができます。 カラーユニバーサルデザイン 2色以上の色を使うときや写真などの上に文字を重ねるとき、多くの人にとって見分けやすい色づかいを行い、その上で形や塗り分け、文字などを併用することで、読めない、使いづらい、分かりづらいといった状態を解消し、できるだけ多くの人に情報が正確に伝わるようあらかじめ配慮する取組のことをカラーユニバーサルデザインと呼びます。主なポイントとして下記の3点があります。 1. できるだけ多くの人に見分けやすい配色を選ぶ 色の濃淡・明暗の差をつける ここに図があります。 見分けにくい色の例と、見分けやすい色の例が並んでいる図です。 図の下に、説明文が書かれています。 説明文:背景と文字の色を明暗や濃淡が対照的な組み合わせとすると見分けやすい。彩度や明度が同程度の色の組み合わせは、見分けづらい人がいる可能性がある。 ここで図と説明文は終わりです。 色を変える 彩度の高い色と低い色、明るい色と暗い色を組み合わせると見分けやすい。 印刷、塗装デザインなどで具体的な色の組み合わせを考える際には、研究者、NPO法人、塗料メーカ業界団体、インキメーカ等で構成される委員会が制作した「カラーユニバーサルデザイン推奨配色セット ガイドブック」が公開されているので利用できる。 カラーユニバーサルデザイン推奨配色セット制作委員会のホームページURL https://jfly.uni-koeln.de/colorset/ 2. 色を見分けにくい人にも情報が伝わるようにする 文字や線を太くすると色の違いが分かりやすくなる 色のほかに形も変えて表現する グラフなどの塗り分けに模様をつける 3. 色の名前などを用いたコミュニケーションを可能にする。 色の名前を併記する 窓口に備え付けの手続用紙を色分けしてある場合など、色の名前を用いてやりとりされる可能性があるものに、色の名前を記載すると分かりやすい。 ここに図があります。 左側には、ピンク色と水色の用紙に、申請書、と書かれている図があります。 説明文:バツ印、ピンクの用紙と言われても、用紙の色が見分けられない。 右側には、ピンク色と水色の用紙に、申請書、と書かれており、さらに、用紙の右上に、ピンク、みずいろ、と用紙の色が書かれている図があります。 説明文:マル印、用紙そのものに「ピンク」「みずいろ」などと色名が書いてある。 ここで図と説明文は終わりです。 色以外の情報も併記する 案内図や路線図、グラフなどで多くの色を使っている場合には、名称そのものも併記すると分かりやすい。 ここに図があります。 左側には、緑色の左向きの矢印と、赤色の右向きの矢印が並んでいる図があります。 説明文:バツ印、「緑の矢印の先が受付です」と言われても、矢印の色が見分けられない。 右側には、緑色の左向きの矢印と、赤色の右向きの矢印が並んでおり、さらに、緑色の矢印の中には、受付、赤色の矢印の中には、会計、と書かれた図があります。 説明文:マル印、矢印に「受付」「会計」のように案内が併記されている。 ここで図と説明文は終わりです。 ページ36 認知症のある人 「認知症」とは、様々な脳の病気により、脳の神経細胞の働きが徐々に低下し、認知機能(記憶、判断力など)が低下して、社会生活に支障をきたした状態をいいます。 認知症をきたす疾患は、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉型認知症など多岐にわたり、症状も多様です。いずれも、注意、記憶、言語、知覚、行為、社会性などの認知機能が複数低下します。多くは、軽度認知障害(MCI)から、緩徐に軽度認知症、中等度認知症、重度認知症へと進行します。二次的に派生する被害妄想、徘徊などの行動・心理症状は、周囲の適切な対応で軽減できる場合もあります。 主な特性と配慮のポイント 認知症のある人は、記憶障害により会話の内容を忘れてしまうことがあるので、要点をメモに書いて渡す。 加齢により、視野が狭くなっている場合もあるので、視野に入り、目を合わせて会話する。 その人のペースに合わせて、分かりやすく、具体的に話す。 一度に多くの話題に言及したり、急に話題を変えたりしないようにする。 妄想には理由があるので、否定せず、思いを受け入れる。 ページ37 重複障害(複数の障害を併せ有する人) 複数の障害を併せ有する状態のことを重複障害といいます。例えば盲重複障害、ろう重複障害などがあります。このガイドラインで掲載している盲ろう者や重度心身障害も重複障害の一つです。 重複障害では、それぞれの障害に起因する困難さのみでなく、それぞれが絡み合い、相乗的に困難さが増大することに留意します。下記は一例であり、併せ有する障害の種類や程度は一人ずつ異なるので、重複障害の様態は様々です。 盲重複障害の特性と配慮のポイント 例えば視覚障害と知的障害や発達障害を併せ有する人は、知的障害や発達障害で有効とされる絵や図を用いた視覚的コミュニケーションを取りづらいことから、体の動きなどで表現するサインなど、他の手段を活用する。 他者の存在の認識や空間把握も苦手であることが多いので、常に分かりやすく状況を伝えるようにする。また、見えていないことを理解しづらく、危険認識が薄いので、火や刃物、自動車などの危険要因に触れないよう、環境整備の配慮が必要である。 ろう重複障害の特性と配慮のポイント 例えば聴覚障害と精神障害や知的障害を併せ有する人は、後見人や支援者、医療関係者とのコミュニケーションを取る際に手話通訳や要約筆記が必要になることがある。このような際にも情報コミュニケーションの手段が確保されるよう、適切に派遣が行われることが望ましい。また、理由なく通訳者の同伴を拒まれることがないようにするとともに、意思疎通支援(7ページ参照。7ページには意思疎通支援の説明が記載されています。)については、当事者の心理的側面にも配慮した対応が求められる。なお、筆談を行う場合も、口頭でのやり取りや説明と同等の内容となるよう留意する。 通訳、要約筆記だけでは十分なコミュニケーションができない場合、当事者が理解できるコミュニケーション手段での支援が必要となる。 このように、重複障害では複数の障害があるために新たな困難が生じることがある。意思疎通だけでなく意思決定支援(7ページ参照。7ページには意思決定支援の説明が記載されています。)が必要な場合もある。こうした当事者のニーズに配慮した対応が求められる。 ページ39 参考:障害のある人への配慮や対応施設に関するマーク ここに図があります。 12種類のマークと、それぞれのマークの名前、マークの説明が掲載されています。 障害者のための国際シンボルマーク 濃い青色の四角の中に、白色で車いすに座っている人が描かれているマークです。 所管:公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 説明文:障害のある人が利用できる建物、施設であることを表す世界共通のマーク。障害の種類や程度にかかわらず、全ての障害のある人を対象としている。 盲人のための国際シンボルマーク 青色の四角の中に、白色で白状をついて歩いている人が描かれているマークです。 所管:社会福祉法人日本盲人福祉委員会 説明文:視覚障害のある人の安全やバリアフリーを考慮した建物、設備、機器に表示する世界共通のマーク。このマークを見かけた場合には、視覚障害のある人の利用への配慮が必要。 身体障害者標識 青色の円の中に、白色の四つ葉が描かれているマークです。 所管:警察庁 説明文:肢体不自由であることを理由に免許に条件を付されている人が運転する車に表示する。危険防止のためやむを得ない場合を除き、このマークを付けた車に幅寄せや割り込みを行った運転者は道路交通法の規定により罰せられる。 聴覚障害者標識 緑色の円の中に、黄色の蝶が描かれているマークです。 所管:警察庁 説明文:聴覚障害であることを理由に免許に条件を付されている人が運転する車に表示する。危険防止のためやむを得ない場合を除き、このマークを付けた車に幅寄せや割り込みを行った運転者は道路交通法の規定により罰せられる。 ほじょ犬マーク 青色と白色を基調とした四角いデザインで、上部に英語でウェルカム、下部にほじょ犬と記載されており、中央には犬の顔を表現したイラストが描かれているマークです。 所管:厚生労働省 説明文:身体障害者補助犬法の啓発のためのマーク。身体障害者補助犬とは、盲導犬、介助犬、聴導犬をいう。身体障害者補助犬法において、公共の施設や交通機関はもちろん、デパートやスーパー、ホテル、レストランなどの民間施設は、身体障害のある人が身体障害者補助犬を同伴するのを受け入れる義務がある。 耳マーク 緑色の矢印で耳の形を表現し、矢印の先端が耳の中に向かっていることで、耳に音が入っていく様子を表現しているマークです。 所管:一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 説明文:聞こえが不自由なことを表すと同時に、聞こえない人・聞こえにくい人への配慮を表すマーク。 このマークを提示された場合は、相手が「聞こえない・聞こえにくい」ことを理解し、口元を見せてゆっくり、はっきり話す、筆談でやり取りするなど、特性に応じたコミュニケーションの方法に配慮する必要がある。 オストメイトマーク 黒色の上半身の人型の下腹部に、白色の十字マークが描かれているマーク 所管:公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団 説明文:オストメイト(人工肛門・人工膀胱を造設している人)のための設備があること及びオストメイトであることを表すマーク。対応トイレや案内板に表示される。 ハート・プラスマーク 青色の四角の中に、白色の上半身の人型があり、胸の部分に赤色でハートと十字(プラス)が重ねて描かれているマーク 所管:特定非営利活動法人ハート・プラスの会 説明文:「身体内部に障害のある人」を表す。 内部障害は外見からは分かりにくいため、障害の存在を示し、理解を得るためのマーク。 白杖SOSシグナル 普及啓発シンボルマーク 白状を垂直に頭上に掲げてSOSのサインを示している赤色の人型の周りを円で囲み、円の正面にSOSと書かれているマーク 所管:岐阜市福祉部障がい福祉課 説明文:白杖を頭上50cm程度に掲げてSOSのシグナルを示している視覚障害のある人を見かけたら、進んで声をかけて支援しようという「白杖SOSシグナル」運動の普及啓発シンボルマーク。 ヘルプマーク 赤色の縦型長方形の上部に白色の十字、下部に白色のハートが描かれているマーク 所管:東京都福祉局障害者施策推進部 説明文:義足や人工関節を使用している人、内部障害や難病の人、又は妊娠初期の人など、外見からは分からなくても援助や配慮を必要としている人が、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることができるマーク。 裏面に付属のシールを貼付すれば、配慮や支援が必要な事柄などを記載できる。 手話マーク 両手で手話を表現しているマークです。 所管:一般財団法人全日本ろうあ連盟 説明文:耳が聞こえない人が手話でのコミュニケーションの配慮を求めるときに提示したり、交通機関の窓口や店舗等、手話による対応ができるところが提示する。 筆談マーク 筆談をし合う手を表現しているマークです。 所管:一般財団法人全日本ろうあ連盟 説明文:耳が聞こえない人、音声言語障害のある人、知的障害のある人等が筆談でのコミュニケーションの配慮を求めるときに提示したり、交通機関の窓口や店舗等、筆談による対応ができるところが掲示する。 ここで12種類のマークの図は終わりです。 障害のある人に関するマークの使用例 ここに図と写真があります。 4種類のマークの使用例の図と写真です。図の下には説明文が書かれています。 「耳マーク」を使用したカードの例 1枚のカードの図があります。一番上の1行に、耳が不自由です、という文が書かれています。 その下の左側に耳マーク、右側に、お手数ですが筆記してください、という文が書かれています。 説明文:マークの横に必要とする配慮が記載されている。 (全日本難聴者・中途失聴者団体連合会ホームページから出展) 視覚障害のある人等に配慮した機能がある歩行者用信号の押しボタン 歩行者用信号の押しボタンの写真があります。押しボタン箱には、盲人のための国際シンボルマーク、がついています。 説明文:歩行者用信号が青であることを音で知らせる機能や、横断時間を延長する機能があるものもある。 障害のある人優先、オストメイト対応のトイレの例 優先トイレの表示の写真があります。表示には、車いすマーク、オストメイトマーク、台に横たわる人と介助者の人型、ほじょ犬マークが掲示されています。 ストラップ型ヘルプマークの使用例 ヘルプマークをリュックに取り付けている写真です。 説明文:カバン等に着けて使用する。マーク本体の裏面に貼付できるシールを同封しており、シールには、氏名や連絡先、手助けしてほしいこと等が記入できる。 ここで図と写真、説明文は終わりです。 ページ42 第2章 場面ごとの配慮 この章では、様々な場面において、障害のある人に対して主に必要とされる配慮をまとめました。複数の障害に共通して求められる配慮もあり、また、個別の障害に応じた配慮もあります。盲ろう者をはじめとする重複障害の状態にある人には、それぞれの障害への配慮と重複障害特有の配慮の両方が必要なことに留意しましょう。 また、会議やイベントでの手話通訳や点字資料など、事前に準備が必要な配慮については、参加者にあらかじめ申込を求めるようにするなど、配慮の求めを促すようにすることも重要です。 障害のある人が障害のない人と同一内容の情報を同一時点において等しく取得できるよう、このガイドラインを活用し、その人に応じた配慮を意識しながら行動することを心がけましょう。 障害のある人への配慮は、子どもや高齢者、外国人などの情報弱者となりやすい人への配慮にもつながっています。 ページ43 情報・コミュニケーションの基本的な配慮 障害のある人から個別に依頼があった際には、可能な限り依頼者が要望する手段・方法でやりとりするようにする。 情報提供の際には、複数の手段の利用を意識する。例えば、文字や画像による情報が、視覚障害のある人にも利用できるよう、点字や音声、利用しやすい電子データで提供する。あるいは、音声による情報が、聴覚障害のある人にも利用できるよう、電子メールやファックスで提供する。 連絡を受け付ける際には、単一の方法に限定せず、例えば、聴覚障害のある人でも連絡できるよう、電話以外に電子メールやファックスも活用する。電話の利用が困難な人から電子メールやファックスが届いたら、電子メールの開封通知要求やファックスの記載内容などにも留意し、受信した旨を迅速に返信する。 外出が困難な障害のある人から、本人が来庁する以外の方法でのやりとりの希望や書類の郵送の依頼があった際には、可能な限り対応する。また、手続方法の複数化も必要に応じて検討する。 耳の聞こえない人や発話困難な人など、電話へのアクセスに困難のある人が、手話通訳オペレータ等を介して電話をかける「電話リレーサービス」の利用も検討する。 ページ44 文書を作成するときの配慮 全般 回答や応募に期限を設ける場合は、情報の入手・読み取り・理解に時間がかかる人であっても余裕を持って対応できるように期限を設定する。 書類の代読・代筆を依頼するのに時間がかかる場合があり、また、音声化された内容や点字を読むためには他の人より時間がかかる場合がある。 視覚障害など 視覚障害のある人であっても情報を得られるよう配慮する。視覚障害のある人に配慮した提供方法としては、音声(利用しやすい電子データでの提供を含む)、点字、拡大文字がある。音声コードがある印刷物は、対応機器やスマートフォンアプリを使用して合成音声で読み上げさせることができる。 優先的に配慮する印刷物や配慮の方法などの具体的な内容については、障害のある人のニーズをよく把握して決定する。 文字の字体、大きさ、太さ、字間・行間、コントラストに配慮する。弱視の人の中には、適切な拡大文字であれば自分の視力を活用して読める人もいる。 複数の色を使う場合は、カラーユニバーサルデザインの観点から、適切な色の組み合わせを用いるとともに、色以外の情報も加えることが望ましい。 弱視の人向けの拡大文字は、22ポイント太ゴシック体もしくはUDフォントを標準に作成する。最近では「UDデジタル教科書体」も多く使われている。 聴覚障害・音声機能障害など 問い合わせ先には電話番号のほか、メールアドレス、ファックス番号等も併記し、音声の会話以外の連絡手段も利用できるようにする。また、電話での問い合わせと同様に応対し、希望のあった返信手段で返答する。 文章は簡潔・明確に。婉曲的、或いは二重否定文は避ける。平仮名より漢字の方が意味の伝わることも多い。 知的障害など 大勢の人に内容が伝わりやすくなるよう、分かりやすい表現を心がける。特に知的障害のある人に対して配慮する場合には、下記の点に留意する。 文書や資料には平仮名で振り仮名(ルビ)をふり、行間を広めにとる。 抽象的な表現は避け、できるだけ平易な言葉で具体的に表現する。 短い文章で要点を伝えるようにする。 代名詞、「前記、前述、次のとおり」などは、伝わりにくいので使用を避ける。 かっこ書きによる長い説明を挿入しない。 絵や記号、図を活用することも望ましい。 失語症など 短い文章で要点を伝えるようにする。(一つの文に新しい情報が2つ以上入らないようにする。)論旨の流れを、矢印やまるばつなどの記号を使って整理して伝える。 箇条書きにする。 通常は漢字表記を行うもの(固有名詞も含め)は漢字を使い、熟語であってもわざわざ簡易な言い回しに書き換える必要はない。その人の尊厳を守るよう配慮する。 ページ46 文書を送付するときの配慮 全般 期限のある文書を送付する場合は、余裕を持って対応できるように期限を設定する。 在宅で生活している人には家族や身近な支援者の支援や配慮も欠かせないことから、文書の内容や個別の状況に応じて、本人以外にも必要な情報が伝わるよう配慮する。 視覚障害 差出人が視覚障害のある人にも分かるよう、封筒の表面に「しるし」を施す。例として、封筒に点字を印字する、浮き出しマークや点字シールを貼る、音声コードを貼り付けて半円形の切り欠きを施すなどの方法がある。 特に個人情報が含まれるような重要な文書や資料には、代読を依頼する際の判断基準になるので、視覚障害のある人にも分かるような目印があることが望ましい。 ここに3枚の写真があります。 1枚目 タイトル 点字加工により差出人が分かるようにした封筒の例 写真 点字加工された横浜市が発送する際に使用する封筒の写真 2枚目 タイトル 点字シールを簡単に作成することができる「点字ラベラー」 写真 点字ラベラーという機器の写真 3枚目 タイトル 音声コードの例 写真 音声コードがつけられた、横浜市の水道料金のお知らせの写真 説明文 スマートフォンアプリ「Uni-Voice」等を利用して音声コードを読み取ると、内容を読み上げることができます。 ここで写真と説明文は終わりです。 ページ47 電子メールを利用するときの配慮 電子メールは、パソコンやスマートフォンなどの様々な情報機器で利用できます。一般的にはパソコン画面を使って読み書きされますが、それ以外に、スクリーンリーダー(注釈1)を利用して音声で読み上げる、点字ディスプレイを接続して指先で読むなど、聴覚、触覚などを活用して情報を伝えることもできます。 注釈1 パソコンなどの画面上のテキストを合成音声に変換して読み上げるツール。 通常は、テキストを音声変換し自動的に読み上げるが、点字ディスプレイに点字出力する機能を持つツールもある。 ここで注釈は終わりです。 また、メール本文以外に、添付ファイルで送信された様々な形式のファイルを扱える技術も進歩してきています。 また、たとえば難病などのため外出が困難で、電話の利用も難しい人にとっては、電子メールは重要なコミュニケーション手段です。 電子メールを活用することで、紙の文書より格段に情報保障の可能性は拡大します。 視覚障害など 電子メールでの情報提供や申込の受付などが行えるように努める。 障害のある人から電子メールでの情報提供の申出があった場合に可能な範囲で対応すること、また、問い合わせ先として電子メールアドレスを記載したり、ウェブサイトにメッセージを送信できる機能を設けたりすることが望ましい。 また、電子メール以外の方法でもやりとりができることが望ましい。 電子メールで文書を提供する際は、その人の状況や利用環境に応じて、ファイル形式や添付ファイルの有無の希望について確認することが望ましい。 視覚障害者は、メール本文をスクリーンリーダーにて読み上げる。そのためにはかなり時間がかかる。宛先、差出人は冒頭に記載し、可能な限り箇条書きを使うなど簡単な分かりやすい文章を作成することが望ましい。また、添付ファイルは、スクリーンリーダーで的確に読み上げない場合があるため、可能な限り本文貼り付けで対応することが望ましい。 ここに写真と説明文があります。 点字ディスプレイの写真 説明文 視覚障害のある方が利用している点字ディスプレイの例。手前に設けられた多数の点が持ち上がり点字を表現します。点字ディスプレイを利用すると、接続したパソコンの画面表示や保存したファイルの内容を点字で読むことができます。 ここで写真と説明文は終わりです。 ページ49 窓口・受付での配慮 「対話・面談・手続の際の配慮」(54から58ページ)も参照 全般 周囲の様子が分からず困っている人、案内掲示の文字やその内容が分からない人がいたら、所属や名前を名乗り、手助けできることがないか声をかける。 例「何々課の何々です。何かお困りですか。」 戸惑っている人、不安な様子の人には穏やかな口調でゆっくり、はっきりと話しかける。話しかけるときは相手の正面から顔を見て話しかける。後ろから声をかけると、驚いてパニックを引き起こす人もいることに留意する。 家族や支援者と一緒に来訪した際にも、同行者でなく本人に話しかける。 こちらからの説明に対する理解が困難な方には、「具体的に」、「ゆっくりと」、「丁寧に」、「繰り返して」説明する。言葉での理解が難しい場合には文字や図を書いて説明する。 何か話そうとしていたら、話せるまでゆっくりと余裕を持って聞く。混乱するので、先回りしてこちらから口をはさまない。 来訪時 入口や窓口に文字やシンボルマーク(39・40ページ参照。39・40ページには障害のある人への配慮や対応施設に関するマークが掲載されています。)を掲示するなどの方法で対応可能な配慮について案内し、配慮の申出がしやすい環境を心がける。 待合室・順番待ちなど 視覚障害 周囲の様子を具体的に分かりやすく伝える。手続等で待つ必要がある場合は、安心して待てるようにおよその待ち時間を伝え、いす等に案内する。また、順番が来たときの案内や誘導にも留意する。 聴覚障害 窓口の順番を音声以外でも知らせるようにする。電光掲示板などの設備を利用するほか、番号を掲げる、直接呼びに行く等の方法が考えられる。 知的障害・精神障害・高次脳機能障害・発達障害など 予定が分からないと不安になる人や待つことが苦手な人もいるので、すぐに応対できないときや時間に余裕のないときは、状況を説明し、およその待ち時間や応対できる時間などを、可能であれば具体的にあらかじめ伝える。 例 「何番の窓口でお待ちください。」、時計を指差しながら「何分待ってください。」、「長い針がここにくるまで待ってください。」、「時間をメモに書いて渡す」など なお、障害特性によっては後から延長すると不快に感じる人もいるので、時間は十分に見積り、根拠なく「すぐに」と言い切るようなことをしない。 内部障害・難病・知的障害・精神障害・高次脳機能障害・発達障害など 障害特性のため、長時間の手続・面談や、長く待つことが困難な人には、別室で休めるようにする、予約を受け付けるなど、必要な配慮を行うことが望ましい。 コミュニケーション方法 全般 不安の強い方や、感覚が過敏な人もいるのでゆっくりと適度な声の大きさで、笑顔で対応する。 人により、コミュニケーション方法が異なるので、どのような方法が良いか、本人に確認ができる場合は意向を確認する。 視覚障害 視覚障害のある人が来訪することの多い場所では、弱視の人が自ら読み書きできるよう、拡大読書器、拡大鏡、手元を照らす照明器具などを常備する。 「こちら」、「あちら」、「あれ」、「これ」などの指示語は避け、具体的な言葉で説明する。 場所は、「何p右」「何歩前」など、物は「何々の申請書」など具体的に説明することが望ましい。 書類等を手渡す際には、まとめて渡すのではなく、1つずつ何の書類か説明しながら、場合によっては、相手の了解を得た上で、手を添え、物に触れてもらい説明する。 聴覚障害 筆談のための器具(筆談ボードなども含む)を備え、筆談の申出がしやすい環境を整える。筆談は、聴覚障害のある人、弱視の盲ろう者、発語・発音に支障がある人などが利用できる。 弱視の盲ろう者に筆談で応対する際は、視力・視野に応じて、見やすい大きさ、太さ、間隔、コントラストで書くようにする。 手話のできる職員がいる場合は、席配置を工夫したり、利用の申出がしやすいよう案内表示をしたりする。タブレット等による遠隔手話通訳(注釈1)のような手段もある。 注釈1 離れた場所に常駐している手話通訳者とタブレット等を利用して映像・音声でやりとり  し、画面越しに手話通訳を行う方法。タブレットの使途は聴覚障害者と聞こえる相手側の  1対1の対応に限定し、周りの人の話までは通訳保障は不可であることに留意する。 ここで注釈は終わりです。 盲ろう者 最初に相手の甲に、あるいは腕に軽く触れて担当者がそばにいることを伝える。 触れることは、複数の障害のある人に安心感を与えやすい。 内部障害 内部障害のある人は、疲労がたまりやすいなど外見からは分かりにくい不便さを抱えていることを理解し、できるだけ負担をかけない対応をこころがける。 発達障害、知的障害、精神障害など たくさんの人がいる場所や狭い空間などで相談や打合せを行っている際にパニック症状を起こす人もいる。この場合、場所を変え、落ち着くまでクールダウンの時間をとり、落ち着いた後に再開するか、日を改めるかなどについて本人の意向を確認し、対応することが望ましい。 視覚障害・聴覚障害・盲ろう者・肢体不自由・知的障害など 代筆を必要とするときは、本人の意思を確認してから代筆をする。なお、代筆を必要とする人としては、視覚障害のある人のほか、失語症の人、肢体不自由のある人や、ろう者(手話のみを用い、文字を利用しない人もいる)などもいる。 失語症 文字があると円滑にコミュニケーションができるため、筆記用具と、地名の確認のための地図や路線図、日にちの確認のためのカレンダーを常備する。 数に関することは、必ず書いて示す。 吃音・失語症など 次の音や言葉が出るまで時間を要することがあり、緊張するとさらに言葉が出なくなることもあるので、本人のペースに合わせて対応し、筆談や手話等、別の手段の希望があれば配慮する。 環境 視覚障害 視覚障害のある人との間で金銭の収受や書類の受渡を行う場合は、必要に応じて内容を口頭で伝えて確認できるようにする。その際、声の大きさや応対場所に配慮し、プライバシーに関する内容が周囲の人に聞こえないようにする。 知的障害・精神障害・高次脳機能障害・発達障害など 障害特性によっては、カウンター越しではなく、できるだけ静かな場所で個別に応対することが望ましい場合がある。なお、その際には応対者が座る位置にも配慮する。騒がしいところで応対すると、周囲の音や動きに気を取られ、相手の話している内容が理解できず自分の考えがまとまらなくなったり、他人の話が気になって心理的に不安定になったりすることもある。 肢体不自由など 車いすを使う人には、立ったままでなく、同じ目の高さになるよう応対する。窓口には、車いすに乗ったまま利用できるよう、高さ、広さ、足もとの構造に配慮したカウンターを設置するよう努める。 筆記の際に、机の高さ、紙の位置、紙の押さえ方、記入欄の位置や大きさに配慮が必要な場合は、可能な限り対応する。 その他の場面 聴覚障害・音声機能障害・失語症・吃音・知的障害・発達障害など よく使われる用件や注文の選択肢を示したメニューを窓口や受付に用意しておくと、会話や発語が苦手な人でも安心して用件を伝えることができる。 自力で発語・発音が困難な人を支援するためのスマートフォンやタブレットのアプリ、専用機器などを、窓口での応対の必要性に応じて用意することを検討する。また、アプリや機器などを持参した人から、それらに応じたコミュニケーションを求められた場合は、可能な限り対応する。 精神障害・難病など 障害の内容や病歴を不必要に収集しない。受付書類にこれらの記入欄があると、たとえ任意であっても心理的圧力になる場合があるので、収集の必要性の有無について十分検討する。 ここに写真があります。 タイトル 筆談ボード(筆談のための器具の例) 写真 筆談ボードに、筆談できます。と書かれている写真 ここで写真は終わりです。 ページ54 対話・面談・手続の際の配慮 「窓口・受付での配慮」(49から53ページ)も参照 環境 視覚障害 視覚障害のある人には音声が特に重要な情報なので、できるだけ静かな場所で応対する。部屋に案内したときは、部屋や机の様子、席の位置を説明する。誤って触れて落としたりけがをしたりしないよう、机の上は整頓する。 十分な明るさを必要とする人、光に敏感な人には、部屋の明るさが適当かどうか確認する。窓や太陽光の位置にも注意する。 聴覚障害 騒がしい環境や屋外などの騒音のある環境では、音声が聞き取りづらくなるので、難聴者や補聴器等で聴力を補っている人には、できるだけ騒音や雑音の少ない場所で応対する。難聴者の中には自分の声の大きさを調節することが苦手な人もいるので、応対場所に配慮し、プライバシーに関する内容が周囲の人に聞こえないようにする。また、周囲の人に手話や筆談(筆談ボードなども含む)が見えないようにする配慮も必要である。 音声機能障害・失語症・吃音など 発語に支障がある人の声が聞き取りやすいよう、また、発語しやすいよう、なるべく静かな場所で応対する。聞き取りにくいときは分かったふりをせず、聞き取った内容を整理して紙に書くなど、他の方法も活用して内容を確認する。 緊張せず話せるよう、隣の人や後ろに並んでいる人の視線が気にならない場所で応対する。別室が望ましいが、視覚を遮るついたて等もある程度の効果がある。 対話 全般 障害のある人に同行している通訳者や介助者等はコミュニケーションに不可欠な役割を果たしているので、正当な理由がない限り同伴を拒まない。同伴ができない場面では理由を説明するとともに、他に利用できる手段がないか検討する。 障害のある人が話すのに時間がかかっていても、急かさず、ゆっくり待つ。先回りして口をはさまない。口頭での説明が苦手な人が用件を文書にして持参した際には、文書にも目を通す。 応対する人数が多すぎると、緊張から疲れてしまったり、内容の理解が難しくなったりする人もいるので、人数に配慮する。 視覚障害 視覚障害のある人にも応対している人が誰であるか分かるよう、同席者も含めて名前を名乗り、席を離れる時、席に戻った時、新たに人が加わったりしたときにはその旨を伝える。 聴覚障害 聴覚障害のある人と音声で対話する際は、ゆっくり、はっきり、口元が見えるように対面で話をする。マスクを外すことが可能な場合には外し、手や資料などで口を隠さないよう注意する。内容が正しく伝わっているか確認し、重要な点は紙に書くなどの方法も併用する。また、状況に応じて筆談、手話通訳、要約筆記等の利用も検討する。 盲ろう者 盲ろう者が通訳・介助員を同行している場合、盲ろう者が主体であることを認識し、本人の意思を確認しながら話をする。 吃音・失語症など 次の音や言葉が出るまで時間を要することがあり、緊張するとさらに言葉が出なくなることもあるので、本人のペースに合わせて対応する。筆談等、別の手段の希望があれば配慮する。 知的障害 氏名の読み方は必ず確認する。間違った読み方で呼ばれると、知的障害のある人が自分のことだと分からないことがある。 知的障害のある人には、穏やかな口調で話しかける。相手の年齢に応じた言葉を使う。伝えたいことを明確にして、短い文章で、ゆっくり、丁寧に説明する。専門用語は避け、一般的な分かりやすい言葉で、できるだけ具体的に説明する。 知的障害のある人の中には、理解していない場合でも「はい」、「分かりました」と言ってしまう人もいるので、要点を言ってもらうなど、正しく伝わっているか確認する。状況に応じて再度説明することも必要だが、本人が嫌がったり自尊心を損なったりしないよう留意する。 家族や支援者と来訪した際にも、本人と話をするよう意識する。 家族や支援者の同席を求める場合は、必ず本人の同意を得る。また、電話でこれらの人へ連絡をとる際は、本人の前で電話する。いずれの場合も必ず本人に要点を伝え、意思を確認する。 知的障害・精神障害・高次脳機能障害・発達障害など 一度に多くのことを伝えようとせず、簡潔に話す。 筆談、絵や写真、図、コミュニケーションボードを用いる、実物を見せる、身振りなどを交えるなど、伝え方を工夫することも必要である。 記憶障害のある人や複雑な内容の理解が難しい人には、説明した内容を示しながら話す。申請書の控えやコピー、大切なことを書いたメモなどを渡す。 言葉が出にくいときには、筆談や絵・図を活用したり、選択肢のある(答えやすい)質問をしたりすることで、意思の表明を手伝うことも考える。ただし、応対者に都合のよい方向に誘導することがないよう十分注意する。 特定の応対者に不信感(マイナスの感情)を抱いている場合は、応対者を変えることが有効な場合もある。 言葉遣いに「言い回し」、「忖度」など駆け引き的な表現は避け、ストレートに伝わるような表現をする。 精神障害・高次脳機能障害・発達障害など 障害のある人の話が聞き取れなくても分かったふりをしない。聞き取った内容を整理して紙に書き、確認しながら、ゆっくり聞き取る。時間をかけても、話が理解できない時は、「ここまでは分かったが、ここからは分からなかった」と正直に伝える。 コミュニケーションが取りづらい場合であっても、内容の正否の判断を急がず、まずは耳を傾ける。 話の内容を頭から否定したり、安易に同調したりしない。伝えたいことが自分で整理できず、細かい部分に気を取られてしまう障害特性があることを理解する。 話の区切りをつけるタイミングを見計らい、落ち着く様子が見られたら、用件を確認し、来訪目的に沿って応対する。 説明は要領よく短時間で行うよう心がける。長時間話し続けていると障害のある人の緊張や疲労、いらだちにつながることもあるので、一休みして気分転換するよう促したり、日を改めたりすることが有効な場合もある。 障害のある人が、不安のため泣き出したり、怒り出したり、笑いが止まらなくなったりした場合は、基本的には、ゆっくりと時間をかけて、本人が落ち着くのを待つようにする。怒り出した原因に心当たりがあればすぐに詫び、心当たりがないときも、誠意を持って応対する。意思疎通がしづらいからといっていい加減な応対をしないようにする。 また、一休みしたり、応対場所を変えたりすることが有効な場合もある。 マナー・ルール違反を特に嫌がる人もいるので、そのような対応を受けたり、そのような場面に直面したりしないよう配慮する。 手続 視覚障害 書類を代読する場合は、まず目次や全体の構成を説明し、その後に必要な箇所を読む。その際は、代読者が要約せず、原文をそのまま読み上げる。 視覚障害のある人が自署する場合は、厚紙や定規などを記入欄の下部に当てるなどの工夫をすると記入しやすくなる。また、署名欄に合わせてくりぬいたクリアフャイルやプラスチックのガイドを活用する。 視覚障害・聴覚障害・盲ろう者・失語症・肢体不自由・知的障害など 本人の自筆が必要であるか手続の見直しを行う。 障害の状況から自筆が困難な場合には、本人の意思を確認して可能な限り職員または介助者等が代筆を行い、代筆者以外が立ち会うようにする。代筆者は本人の意に反した内容を記入したり、誘導したりしない。 代筆した内容を読み上げて本人が確認できるようにする。その際、声の大きさや応対場所に配慮し、プライバシーに関する内容が周囲の人に聞こえないようにする。 知的障害 知的障害のある人が書類を作成する際には見本を示すことも有効だが、内容の誘導にならないよう十分注意する。 聴覚障害・音声機能障害・失語症・吃音など 窓口や電話で、氏名や生年月日、住所等を口頭で述べることにより本人確認を行う場合には、口頭(音声)以外の方法も利用できることが望ましい。また、手話通訳者等を介する場合もあることに留意する。 コラム 誰もが投票しやすい環境づくりの取組 本市では、誰もが投票しやすい環境づくりを目指し、障害特性に応じた対応方法をまとめた投票所接遇マニュアルを作成し、全ての投票所において適切な対応が図られるようソフト・ハードの両面から取り組んでいます。 投票所での取組 1.投票所掲示物への「ふりがな」表示 2.投票所入口までの誘導表示の追加、改善 3.障害者マークなどのピクトグラム(絵文字・絵言葉)の表示 4.受付への「耳マーク」の表示 5.コミュニケーションボードの用意 6.筆談セットの用意 7.投票用紙記入補助具の用意 8.順路に沿った番号表示 9.貸出物品の案内表示(点字器・拡大鏡・文鎮) 10. 車椅子の用意 11. エチケットラインの設定 ページ60 会議・会合・イベント等を開催するときの配慮 移動・安全確保の配慮 全般 普段利用していない部屋や施設で開催しようとする際には、特にバリアフリー設備や放送設備、照明などの対応が十分であるか下見を行う。 視覚障害・肢体不自由など 視覚障害のある人が迷わず安全に移動できるよう、会場までの経路の情報を提供する、点字案内を整備したり内容を確認したりする、誘導のための人員を配置するなどの配慮を行う。 他の参加者に対しては、衝突防止に注意する、点字ブロックの上をふさがないなど、障害のある人の安全が確保できるよう協力を呼び掛ける。 盲ろう者 会議に盲ろう者が出席する場合には、通訳・介助員を手配するなどの配慮をする。なお、盲ろう者が自宅と会場とを往復する際も通訳・介助員が必要であることに留意する。 開催準備 全般 参加者が特定されている場合、必要な配慮について事前に確認する。また、不特定多数が参加するイベントや、傍聴が可能な会議の際にも、参加希望者が事前に配慮の要望を申し出られるようにする。用意に時間を要する配慮については合理的な範囲で申出の期限を定め、その期限を明示する。 障害の状態によっては公共交通機関の利用が困難であったり、一人で会場まで来ることが難しいこともあるため、事前に障害の状態を確認し、必要な配慮を行うようにする。オンライン開催についても検討する。 なお、オンラインの操作が困難であったり、環境が整わない人にも配慮する。 あらかじめ参加者の障害の内容が分かっている場合には、案内や説明の工夫が行えるよう、司会や講師を含めスタッフ全員にその旨を伝えるようにする。 障害のある人に講演・出演等を依頼する場合、事前に主催者の責任で必要な配慮を検討・把握し、適切に準備・対応する。 聴覚障害・音声機能障害 聴覚障害のある人が必要とする配慮には、手話通訳や要約筆記の配置、補聴援助システム(磁気ループ (注釈1)等)の設置などがある。また、音声機能障害のある人のため、小さな会場であってもマイクが利用できるようにする。 注釈1、補聴援助システム(磁気ループ) 音・声が聞き取りにくい人、補聴器を利用している人、聴覚に障害がある人等が音楽や話し声を聞きやすくなるための設備。ヒアリングループともいう。 ここで注釈は終わりです。 会議やイベントの規模によっては、あらかじめ手話通訳や要約筆記などの配慮を用意する。また、代読・代筆者の配置を検討する。その際には、用意されている配慮を開催案内等に明記する。なお、非公開の会議においても手話通訳者などの同席は認められることに注意する。 要約筆記はその場での情報保障のための手段であり、記録を目的としたものではないので、議事録に代用しないようにする。 発達障害など 感覚過敏のため、騒がしい場所や大勢の参加者がいる場所が苦手な人もいることに留意する。あらかじめ会場の様子を説明することで、本人や支援者が適切に対応・判断できることもある。 資料の用意 視覚障害など 要望に応じて、資料を点字、拡大文字、音声コード貼り付け、音声で読み上げるためのテキストデータなどの形式でも作成・提供する。 視覚障害・聴覚障害・盲ろう者など 障害のある人が事前に内容を把握できるよう、極力、事前に資料を配付・送付する。特に以下のような状況に配慮する。 点字、拡大文字、音声コード、テキストデータを会場で読むことは難しい。 手話通訳や要約筆記を見ながら手元の資料を読むことは難しい。 指点字や触手話の通訳を受けながら資料を読むことは難しい。 聴覚障害・盲ろう者 手話通訳者、要約筆記者、盲ろう者向け通訳・介助員が会議等の内容を把握し、正確な通訳が行えるよう、通訳者等のために活字の資料を用意する。 会議等の進行 全般 障害特性に応じて、会議等の進行速度に配慮する。 会議の時間は可能な限り短く設定する。会議では、おおむね1時間ごとに休憩を設ける。特に、盲ろう者が指点字・触手話等の通訳内容を理解するには大変な集中力を要するうえ、両手をふさがれて身体面でも疲労するため、適切な休憩が必要である。 視覚障害・聴覚障害・盲ろう者など 会議などで発言する際は、視覚や聴覚に障害のある人にも発言者が誰なのか伝わるよう、名前を名乗ってから発言することを参加者に求める。発言者の名前は、手話通訳や要約筆記の際にも必要な情報である。 盲ろう者 盲ろう者が参加する場合は、盲ろう者向け通訳・介助員が通訳しやすいよう、また盲ろう者本人が読み取りやすくなるようにするため、ゆっくり発言し、また語句と語句の間に時間を空けるように留意する。 音声機能障害・失語症・吃音など 吃音の人や声が出にくい人でも発言しやすいよう、音声以外(挙手など)の方法で発言機会を得られるようなルールを用いたり、順番に指名したりするなど、司会が配慮する。また、発言の途中で小休止をとったり言葉が出なくなったりしたときに他の参加者が発言しないよう協力を求める。 吃音の人や声が出にくい人が発表する際には、プロジェクターの併用や資料の事前配付などの方法でスムーズにできることもある。また、他の発表者もこれらの方法を利用することで、特別扱いのような違和感を避けることができる。 席配置・会場設定 視覚障害 スクリーンやモニター画面を利用する場合には、弱視の人の席の位置に配慮する。また、場内を暗くすると視力が大幅に低下する人には、手元で利用する照明を持参するよう事前に案内するか、または主催者側で準備する。 聴覚障害・盲ろう者・失語症など 席の配置に配慮し、本人に希望を確認する。一般に、聴覚障害者は発言者の表情が見やすく、音声が聞き取りやすい最前列が望ましい。手話通訳や要約筆記を利用する場合も見えやすい前方の席がよいが、場内の様子も分かるよう最前列を避ける人もいる。磁気ループを利用できる座席が限定されている場合は設置場所を明示する。 手話が見やすくなるよう、通訳者の立つ位置、高さに留意する。場内を暗くする場合でも、手話通訳や要約筆記が見えるよう、照明や席の配置に配慮する。 会議参加者が個別に手話通訳や要約筆記を利用する場合は、通訳者の席を用意し、必要な広さを確保する。 指点字、手のひら書き、要約筆記、パソコン通訳などをコミュニケーション手段とする人の場合、椅子のみでなく、机を用意する。 色覚異常 レーザーポインターを使用する際、色覚異常の人でも見やすいよう、赤色でなく緑色などのものを使用することが望ましい。 ページ64 案内・表示における配慮 全般 障害のある人に対応した設備(特にトイレやエレベーター、駐車場)が来訪者に分かりやすく伝わるよう施設案内の内容の充実や表示の整備に努めるとともに、ウェブサイト等を通じて対応設備や案内の情報を提供する。なお、点検等で設備が使用できない場合は、事前の告知に努め、代替手段の情報も提供するようにする。 視覚障害・色覚異常など 視覚障害のある人にも現在地や行き先が分かるよう、建物の案内表示や手すり等に点字を付けたり、触地図の整備を検討する。また、案内表示は弱視・色覚異常の人にも見えやすいよう、大きさ、位置に配慮し、カラーユニバーサルデザインの観点から色づかいにも留意する。(34から35ページ参照。34から35ページには、色覚異常のある人への配慮について記載されています。) 建物の案内表示や触地図は常に最新の情報に更新し、利用者が迷わないようにする。特に、点字が併記してある場合には点字も同様に更新する。案内表示を設計する際には更新のしやすさや費用も考慮することが望ましい。 来館者向けにタッチパネル式機器等を設置・提供する際は、視覚障害のある人でもテンキーや音声などで操作できるようにするか、有人窓口や案内係など、他の手段も利用できるように配慮する。 知的障害・発達障害など 必要に応じて、案内にふりがなをつける、図や記号、絵を併用するなど、知的障害のある人などへの配慮を行う。また、これらの配慮は読み書き障害のある人や、日本語に不慣れな外国人などに対しても役立つ。 ページ65 福祉サービスについての情報を提供するときの配慮 全般 障害のある人が、様々な福祉サービス(入所や通所での障害福祉サービス等のほか、相談支援や成年後見制度等)を利用する際にも、障害の種類によっては情報・コミュニケーションのために適切な支援を受ける必要があることに留意する。 情報の入手手段が限られる人であっても、必要な情報が入手できるよう、情報提供の方法を十分に検討し、必要な人に情報が届くように努める。 障害のある人に関する団体は、障害のある人にとって必要な情報を提供したり、障害のある人のための様々な事業やサービスを実施したりしている。これらの団体に対しても適切に情報提供を行うとともに、地域で生活している障害のある人が必要に応じて団体の存在や活動内容等を知ることができるよう周知に努めるようにする。 ページ66 災害時・緊急時の配慮 本市では、「地域ぐるみで災害対策 災害時要援護者支援ガイド」を作成し、市ホームページに掲載しています。この項目では、「地域ぐるみで災害対策 災害時要援護者支援ガイド」より一部抜粋した内容に、説明を加え記載しています。 災害時の配慮 避難所の運営に協力するとき 目の不自由な人に配慮し、お知らせは拡声器などを用いた放送で知らせましょう。 耳の不自由な人に配慮し、放送によるお知らせは必ず掲示するなどしましょう。 災害時要援護者の状況ごとに必要な配慮 耳の不自由な人 外見から分かりにくい場合があります。 外見からは聞こえないことが分かりにくいため、挨拶したのに返事をしないなどと誤解されることがあります。 避難者で手話が使える人がいれば、協力をしてもらいましょう。 ただし、耳が不自由であっても、全ての人が手話を使えるわけではありません。どのような支援が必要か、よく確認をしましょう。 人それぞれ障害になった時期、障害の程度などによって、コミュニケーションの手段が異なることを理解しましょう。 中には相手の口の動きで言葉を読み取る人もいらっしゃいます。話をするときは、相手に自分の口が見えるように、口の動きがはっきり分かるように、ゆっくりと話しましょう。 補聴器をつけている人もいますが、補聴器で音を大きくしても、明瞭に聞こえているとは限らず、相手の口の形を読み取るなど、視覚による情報で話の内容を補っている人もいます。 話をするときは、筆談でやりとりをすることもできます。声に出して話すことができても相手の話は聞こえない人もいますので、確実に伝わるよう書いて確かめましょう。 視覚を中心に情報を得ています。 音や声による情報が得にくく、文字や図などの視覚により情報を入手しています。 放送などの音声情報だけではなく、必ず同時に文字情報での情報提供を行いましょう。 掲示板などを設けるなどしましょう。 掲示物を指差すなどして重要な情報を伝えることも考えられます。 目の不自由な人 音声を中心に情報を得ています。 目からの情報が得にくいため、音声や手で触ることなどにより情報を入手しています。 文書を読むことや書類に文字を記入することが難しい人もいます。 掲示板などの文字情報だけではなく、必ず同時に音声情報での情報提供を行いましょう。 掲示板のところに一緒に行って、 掲示物を読み上げることも考えられます。 指示語(あれ、これなど)は使わないようにしましょう。 知的障害のある人 複雑な話や抽象的な概念は理解しにくい場合があります。 人にたずねること、自分の気持ちを伝えること、漢字の読み書きや計算が苦手な人もいます。 ひとつの行動に執着したり、同じ質問を繰り返したりする人もいます。 短い文章で「ゆっくり」「具体的に」「繰り返し」説明をお願いします。 抽象的な表現は用いず、できるだけ具体的に説明してください。ただし、決して子ども扱いはせず、本人を尊重するように話をしましょう。 強い口調に驚いてパニックをおこす人もいます。穏やかな口調を心がけてください。 発達障害(自閉症など)のある人 外見から分かりにくい障害の一つで、年齢相応の社会性が身についていないように感じることがあります。 ・遠回しの言い方や曖昧な表現は理解しにくいです。相手の言ったことを繰り返すときは、相手が言っていることが理解できていない場合があります。 いつ・どこで・何を・いつまでにするかをはっきり伝えるようにしましょう。 ・「ちょっと待っていてください」ではなく、「何分間(何時まで)待っていてください」など、具体的に、簡潔に伝えるようにしましょう。 相手の表情・態度やその場の雰囲気を読み取ること、順序立てて論理的に話すことが苦手な人もいます。関心あることばかりを一方的に話す人もいます。 ・環境の急激な変化でパニックをおこしやすくなる人もいます。また、大勢の人がいる場所が苦手な人もいます。 体育館以外の教室等が確保できれば、専用スペースを設け、落ち着ける環境をつくりましょう。 その人の行動をよく知っている人がいる場合は、落ち着ける状況を聞き取り、対応しましょう。 精神障害のある人 ストレスに弱く、疲れやすく、対人関係やコミュニケーションが苦手な人もいます。 災害からもたらされる様々なストレス状況に大きな負担を感じている場合があります。服薬中断により、一時的に症状が悪化する人もいます。 慣れない環境で不安定になり、集団生活になじめない場合があるので、本人や家族が孤立しないよう配慮することを心がけましょう。 体育館以外の教室等が確保できれば、専用スペースを設け、落ち着ける環境をつくりましょう。 その人の行動をよく知っている人がいる場合は、落ち着ける状況を聞き取り、対応しましょう。 参考 災害に備えた情報伝達・情報入手手段 日ごろから地域の防災訓練に参加するとともに、お付き合いのある身近な人に情報伝達をお願いしておきましょう。 横浜市防災情報Eメール 横浜市では、地震震度情報、気象警報・注意報等を始めとする防災情報をEメールで配信するサービスを行っています。このサービスを携帯電話等で活用することにより、防災情報をいち早く入手することができます。 詳しい内容や登録方法等については、横浜市総務局危機管理部のホームページに掲載されています。 聴覚障害者災害情報配信登録 耳の不自由な人には、事前登録制で避難情報等の災害時緊急情報をファクシミリ通信網を利用して自宅のファックスへ配信する仕組みがあります。 対象者や登録申請につきましては、横浜市健康福祉局障害福祉保健部のホームページまたは各区福祉保健センターにてご確認ください。 電話お願い手帳 NTTで作成している「電話お願い手帳」を使うと「用件を電話で連絡したい」「緊急事態なので助けてほしい」など、周りの人に協力をお願いしたいことが、分かりやすく伝えられます。 NTTのホームページに、ウェブ版・アプリ版・印刷用PDFデータについて詳しい内容が掲載されています。 参考 事件・事故等の緊急時の情報伝達手段 聴覚障害・音声機能障害・失語症・吃音など 聴覚障害や音声機能障害、失語症、吃音などのため音声による通報が困難な人が、音声以外で通報を行うことができる方法があります。 110番アプリシステム  警察庁が開発し、事件事故の発生(通報)場所を管轄する都道府県警察に通報するもので、聴覚や言語に障害がある方など音声による110番通報が困難な方がスマートフォンなどを利用して、文字や画像で110番通報できるシステムです。 スマートフォンにアプリをダウンロードし、氏名、電話番号、パスワードなどを事前登録することで利用できます。 ファックス110番 事件・事故等の必要事項を紙面にし、ファックス送信して警察(110番センター)に通報することができます。 ネット119緊急通報システム スマートフォンなどの携帯端末から、簡単なボタン操作で救急車や消防車を呼ぶことができます。 ファックス119番 局番なしの119番にファックス送信することで通報できます。 電話リレーサービス 電話リレーサービスとは、耳の聞こえない人や発話困難な人など、電話へのアクセスに困難のある人が、手話通訳オペレータ等を介して電話をかけることにより、通話の相手方との意思疎通を可能とするサービスです。 一般の電話への発信に加えて、緊急通報(110、119、118)にも対応できるようになりました。 ページ71 ウェブサイト・動画等の配慮 ウェブサイト(ホームページ)での情報提供における配慮 ウェブアクセシビリティの向上は、障害のある人に限らず様々な人にとって利用しやすいウェブサイトを提供するために重要です。 日本国内では高齢者・障害者に配慮したウェブコンテンツについて規定したJIS規格(JIS X 8341-3)が定められています。 なお、総務省では、国及び地方公共団体等の公的機関のホームページ等が、高齢者や障害者を含む誰もが利用しやすいものとなるように、公的機関がウェブアクセシビリティの確保・維持・向上に取り組む際の取組の支援を目的として「みんなの公共サイト運用ガイドライン」を作成しています。本市もこのガイドラインに基づいた企画・制作・運用の管理、及び職員に対する継続的な教育による運用ルールの遵守により、ウェブアクセシビリティの維持・向上を目指しています。 障害のある人が利用しやすいウェブサイトを提供するには、特に下記の点に留意します。 身体に障害のある人などは、マウスは使わずキーボードのみで入力することがある。また、音声入力を利用する人もいるので、これらの操作を意識する。 全盲の人は、ウェブページの内容を把握したりページを移動したりするために、スクリーンリーダーを利用している。視覚障害者は、障害の程度により画面表示(サイズやコントラスト等)を調整して利用することもある。これらの利用に配慮した内容で提供する。 視覚以外の方法でも内容が伝わるよう配慮する。また、色覚異常の人にも色が見分けられるよう配色にも配慮することが望ましい。 文書をPDF形式で掲載する際は、スクリーンリーダーでも読めるよう、単なる画像ではなく適切なテキスト情報を含む形式で用意することが望ましい。また、ウェブページ(HTML)として掲載可能な情報はウェブページでの掲載を基本とし、PDF形式のみで掲載することは避けるようにする。 外出機会が少ない人や電話等を使いづらい人にとってはウェブサイトが重要な情報源となることに留意し、必要とされる内容を想定した情報提供を行うとともに、古い情報、誤った情報が掲載され続けないようにする。 全ての人がウェブサイトや各種情報機器を利用して情報を入手することができるわけではないことに留意し、他の情報提供手段も併用することが望ましい。 動画コンテンツを作成するとき 広報番組放送や広報DVD、インターネット経由で提供する動画等を作成する際には、以下の配慮を行います。 視覚障害のある人への配慮として、副音声によるナレーションや音声ガイドを付加することが望ましい。 聴覚障害のある人への配慮として、手話通訳を付加したり、字幕等文字情報の提供を併用したりすることが望ましい。 動画の中で問い合わせ先などを示す場合には、視覚(文字や画像)、聴覚(ナレーション)の両方で具体的な内容を提供する。(たとえば、「御覧の電話番号」では伝わらない) ページ73 障害のある人への職場での配慮 障害のある人もない人も、その能力と適性に応じた雇用の場に就けるようにすることは重要なことです。改正障害者雇用促進法が施行され、雇用分野での障害者差別は禁止、合理的配慮の提供は義務とされました。ポイントは下記のとおりです。 1. 雇用の分野での障害者差別を禁止 2. 合理的配慮の提供義務 3. 相談体制の整備・苦情処理、紛争解決の援助 これを受け、合理的配慮の提供について様々な取組が進められています。私たちも職場で働く一員として、法や厚生労働省・都道府県労働局による指針等(注釈1)を遵守するとともに、特に情報のやりとりに関して以下のような配慮を行うことが求められています。 注釈1  厚生労働省障害者雇用対策課では、事業主が取り組んでいる事例を収集した「合理的配慮指針事例集」を作成・公開している。 関連する厚生労働省ホームページのアドレス https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shougaisha_h25/index.html ここで注釈1は終わりです。 障害のある人であっても、適切な配慮があれば他の能力を活かしてできることは数多くあることに留意し、仕事の内容や分量、提供する配慮を考える。 周囲の人が何でも代わりにするのではなく、本人の意思や能力を尊重し、適切な判断や決定が行えるよう、障害特性に配慮した形で情報を提供し、コミュニケーションが行えるようにする。また、障害のある人同士で相談できるようなコミュニケーション環境(例えばピアサポート(注釈2)のような仕組み)を作ることも働きやすい職場づくりに有効である。 注釈2  「ピア」とは仲間を意味している。専門家によるサポートとは違い、仲間としてよりよくサポートすることをいう。 ここで注釈2は終わりです。 障害のある人が働き続けるには、組織のトップや管理職、人事担当者のみでなく、日常的に同じ職場で働く 人たちの障害に対する理解が欠かせないことに留意し、同僚等への適切な研修や説明、情報提供を行う必要がある。 職場内で共有する必要がある情報が障害のある人にも伝わるよう、掲示のみ、口頭のみといった伝達方法にならないよう注意する。内部関係者のみの会議や会合であっても、障害特性に応じた合理的配慮を提供する。 仕事を頼むときには、作業量に配慮し、用件を一つずつ伝える。他の用件をすでに受け持っている場合には、優先順位の判断ができるよう配慮する。口頭ではなく、内容を文字や図表などで具体的に示すことで伝わりやすくなることもある。記憶障害のある人や、複雑な事柄の理解が苦手な人には、メモを渡す、定期的に継続して伝えるなどの配慮も有効である。 精神障害や高次脳機能障害では、疲れやすくなる症状があることに留意する。 本文はここまでです。 障害のある人に対する情報保障のためのガイドライン 令和6年3月 横浜市 発行 横浜市健康福祉局障害福祉保健部障害施策推進課 〒231-0005 横浜市中区本町6-50-10 電話 045-671-3598 ファックス 045-671-3566 協力 横浜市障害者社会参加推進センター 作成にあたり千葉県が作成した「障害のある人に対する情報保障のためのガイドライン」を参照しました。 障害のある人に対する情報保障のためのガイドラインはここで終わりです。