第3章 計画の全体について 1 基本姿勢 第三次読書計画を推進するにあたっては、第二次読書計画の重点項目や取組等を継続しつつ、社会環境の変化を踏まえ、地域資源やデジタル技術を活用して、 アクセスしやすい環境づくりを進め、年齢や、障害の有無、国籍等に関わらず、活字に親しめるよう、次の4つの基本姿勢を基に、読書活動を推進します。 1 デジタル社会に対応した読書環境の整備の推進 年齢や、障害の有無、国籍等に関わらず活字を楽しめる環境づくりに向けて、デジタルを活用した読書環境を充実させ、紙媒体だけでなく 電子書籍等を柔軟に選択することができるよう取り組みます。 ※本市では令和3年に図書館で電子書籍サービスを開始したことや、令和6年に株式会社ポプラ社と協定を結び、小中学校9校で同社の運営する 電子書籍読み放題サービスの「Yomokka!(よもっか!)」を試行導入するなど、電子書籍の活用を推進しています。(P.25コラム参照) 2 区の地域性に応じた読書活動推進 地域性に応じた読書活動に対するニーズを捉えて、区役所・図書館・学校は連携して、区の活動目標を定め、効果的な読書活動の取組を進めます。 3 協働・共創による読書活動推進 様々な主体と協働・共創の視点を持って連携し、互いの特性を生かしながら、横浜らしい読書活動の推進に取り組みます。 4 読書活動推進を支える人材の育成 年齢や、障害の有無、国籍等に関わらず、すべての市民が文字・活字文化の恩恵を受けることができるよう、 デジタル技術に関する能力開発も含めた人材育成に取り組みます。 【コラム 人材育成】 ●司書職人材育成ビジョンの策定(令和6年4月) 横浜市図書館ビジョンを実現するために、図書館の司書の活躍が期待されます。本・情報に関する専門性を高めるだけでなく、デジタル活用や 交流・協働・共創を進める能力を高めていくことは、変化し続ける図書館を支えるために、司書の能力として欠かせないものです。そのため、 司書職人材育成ビジョンを令和6年4月に策定しました。第三次読書計画を進めるにあたっても、司書職人材育成ビジョンに基づき人材育成に 取り組んでいきます。 ●学校司書研修 学校図書館の運営、読書活動の推進、児童生徒理解に関する研修等を年度当初に行っています。年間10回程度、学校図書館の環境整備や読書活動、 授業支援等について学びます。講師には、指導主事や市立図書館司書をはじめ、その専門の外部講師などを招いています。研修の内容に応じて、 研修形態を設定しています。また、司書教諭と合同で実施する研修では、自校の取組についての協議や共通理解を図る時間を設定しており、 協働・連携への意識をより高めています。 【コラム デジタル社会に対応した読書環境の整備について】 本市ではデジタル社会に対応した読書環境の整備を進めるべく、様々な取組を行っています。 ●図書館での電子書籍サービスの開始(令和3年3月) 市立図書館では、令和3年から電子書籍サービスを導入しています。横浜市に在住、在勤、在学の方で、横浜市立図書館の有効な図書館カードをお持ちの方は、 申込み不要で電子書籍を利用することができます。 電子書籍には次のようなメリットがあります。 【Point1】いつでもどこでも、あなたのいる場所が図書館に。 ・24 時間いつでもどこでも、好きな時に好きな場所で気軽に読書を楽しむことができ、読みたい、知りたい、調べたい、に応えてくれる。 ・スマートフォンやパソコンがあれば利用できるので、返却時に沢山の本を抱えて図書館に来館する必要がない。 【Point2】多様なコンテンツを提供 ・15,000点(令和5年度末時点)を超える様々なコンテンツを取り揃えている。 ・耳で読書を楽しむことができるオーディオブック、文字の拡大や色の反転機能、読み上げ対応ができるテキスト版サイト、多言語対応しているコンテンツもある。 ・紙の本では市立図書館に所蔵していないコンテンツも多数取り揃えている。 【Point3】新たな読書体験 ・紙の本とは異なったラインナップ、様々な機能、スマートフォンや タブレット端末、パソコン等で利用できることにより、これまでの 紙の本での読書とは異なった、新たな読書体験を得ることができる。 ●Yomokkaの利用について(1人1台端末での電子書籍の活用) Yomokkaとは株式会社ポプラ社が“いつでも、どこでも、好きなだけ!”をコンセプトに、子どもたちの読書環境を支え、新たな読書体験を提供することを目指した、 読み放題型電子書籍サービスです。サービス導入によるメリットは以下のとおりです。 【Point1】子どもが手に取れる本が増える! ・「いろいろな本を読みたい」という子どもたちの多様な興味に応えられる。 ・本の配架スペースを必要としないため、物理的な制約を受けずに利用でき る図書が増える。 【Point2】同じ本を何人でも同時に読める!授業等での活用の幅も広がる! ・1人1台端末を活用して、学校図書館以外の場所でも読書ができる。 ・クラス全員が同じ本を読んで感想を共有したり、朝の読書タイムや調べ学習等でも活用できる。 【Point3】多様な子どもたちの読書機会の確保! (読書バリアフリー) ・一部の電子書籍で文字の大きさ・色、背景の色を変えることができ、 図鑑なども拡大して見ることができる。 ・内容を音声で聴くことができる読み上げ機能が一部搭載されている。 学校図書館だけでなく、1人1台端末で教室など、朝読書や調べ学習、授業での活用も!どこでも読書を楽しむことができます。デジタル社会に対応していくため、 これからも様々な取組を進めていきます。 2 計画体系 第三次読書計画は「子ども読書法」・「読書条例」・「読書バリアフリー法」の3つの法律・条例を踏まえながら進めていくため、 第二次読書計画から3つの根拠法令に合わせる形に再編し、3つの柱と5つの施策で構成します。 柱1 未来を担う子どもたちの読書活動の推進【子ども読書法】 1 学校における子どもの読書活動の推進 2 家庭・地域における子どもの読書活動の推進 柱2 市民の読書活動の環境と機会の充実【読書条例】 3 利用しやすい図書館サービスの充実 4 読書に親しみ楽しむ機会の充実 柱3 読書バリアフリーの推進【読書バリアフリー法】 5 読書バリアフリーの推進 【第二次読書計画から第三次読書計画への再編イメージの図】 ●指標一覧 客観的な根拠に基づく読書活動を推進するため、計画期間内に実施した施策の成果等を測る一つの基準として、次のとおり数値を設定します。 柱1 未来を担う子どもたちの読書活動の推進 成果指標  指標①小中学校の学校図書館の利活用の促進 a 来館者数(平均値) 現状値11,358人 目標値11,500人 b 貸出冊数(平均値) 現状値7,098冊 目標値7,500冊 指標②一日のうち読書を「している」と回答した小中学生の割合 現状値68.0% 目標値70.0% 柱2 市民の読書活動の環境と機会の充実 成果指標 指標①図書館における貸出冊数※ 現状値11,847,034冊 目標値12,600,000冊 ※図書館での貸出(電子書籍の貸出を含む)及び広域相互利用による他都市での横浜市民への貸出を含む 指標②図書館におけるボランティア活動者延べ人数 現状値3,326人 目標値4,200人 指標③多様な主体との協働・共創数 現状値441団体 目標値500団体 柱3 読書バリアフリーの推進 図書館における活字資料での読書が困難な方へのサービス登録者数 現状値446人 目標値500人 柱1 未来を担う子どもたちの読書活動の推進 施策1 学校における子どもの読書活動の推進 施策の目標・方向性 学校の教育課程の展開に寄与する学校図書館の機能を果たし、子どもの実態に応じて、授業での学校図書館の利活用を推進します。 様々な他者と協働しながら子どもの読書機会を創出するとともに、子どもとともに創り上げる読書活動の取組を推進します。 外国籍、外国につながる児童生徒や、個別支援を必要とする児童生徒数の増加により、読書のカタチはより多様になることが想定されることから、 子どもの読書環境の充実をより一層推進します。 ✦ 現状と課題  令和2年度「学校図書館の現状に関する調査」公表結果では、学校図書館図書標準の達成率の全国平均が小学校71.2%、中学校61.1%であるのに対し、 横浜市は、小学校11.9%、中学校35.7%と大幅に下回っている状況が見られます。ただし、図書標準を100%として蔵書状況を考えたとき、 総蔵書数と総学級数から令和5年度の蔵書状況をみると、小学校は83.8%、中学校は92.9%であり、図書標準達成に向け、各校において継続して 取り組んでいるところです。各校の教育課程の展開に寄与する学校図書館の機能を果たすため、多様な子どもの実態に応じた様々な図書を整備し、 決して子どもの読書機会が奪われることのないよう、学校図書館の図書の充実が求められています。学校における書架や図書は限られていることからも、 図書館からの教職員向け貸出や近隣校との図書の貸借についても、利用の方法を周知し、図書の活用が図られるように継続した支援が必要です。 令和2年度学校図書館の現状に関する調査公表結果図書標準達成率 小学校 全国71.2%     市(令和2年度)11.9%     市(令和5年度)14.5% 中学校 全国61.1%     市(令和2年度)35.7%     市(令和5年度)37.7% 《出典》令和2年度「学校図書館の現状に関する調査結果」及び横浜市教育委員会調べ また、外国につながる児童生徒数は、(令和5年5月1日現在)1万人を超えており、令和2年度以降増加傾向が続いています。 さらに、個別支援学級に在籍する児童生徒数は、令和2年度の8,286名と比較して、令和5年度には11,457名に増加しています。 読むことに困難さを抱える児童生徒や外国語を母語とする児童生徒が手に取れる図書を配架するなど、多様な子どもたちの 読書機会の確保につながるよう、読書環境のより一層の充実が求められます。  令和5年度横浜市学力・学習状況調査における生活意識調査では、「一日のうち読書を「している」と回答した市内小中学生」の割合は、 第二次計画における当初値(平成30年度)との比較では、学校司書の配置による効果から小学校74.7%、中学校56.9%と増加しました。 一方、令和4年度と令和5年度を比較すると、小学校においては横ばい、中学校においては減少傾向が見られます。 国語における読書単元での本の紹介やポップ作りなど、学習を通して得た力は、委員会活動や他教科等とも関連させながら発揮できるようにすることが 大切であり、各教科等においても、様々な本や資料、新聞などから得た情報を活用する授業実践、学校の教育活動と図書とをつなぐ取組や読書機会の 創出の好事例は積極的に共有を図り、各校において参考・還元されることが望まれます。  より多くの子どもたちが読書に親しむことができるよう、司書教諭・学校司書・ボランティアが連携して行う読書活動や、学校内の読書環境整備、 学校図書館の利活用の促進を引き続き進めていくことに加えて、子どもたちの実現したい学校図書館像や読書活動について、子どもの声も積極的に 活用する取組を実施し、子どもとともに読書活動を推進していくことも必要です。  学校司書が全校に配置された平成28年度から、「学校図書館の平均貸出冊数」は令和元年度を除き、常に7,000冊を超えています。 また、「「学校図書館が好き」と答えた市内小中学生の割合」は、70.6%(平成30年度)から78.8%(令和5年度)に大幅に増加しており、 学校司書は子どもの読書活動を支える大切な役割を担っているといえます。一方、社会の状況の変化が激しい時代において、 様々な図書による読書への案内、情報活用能力の育成支援等、各学校において必要となる力は多岐にわたり、学校における教職員や子どもからの ニーズも多様化しています。配置から12年を迎え、多様な子どもたちのニーズに応えるためにも、学校司書は経験年数に応じて、 より一層のスキルアップを図る必要があります。 ✦ 主な取組 1 読書環境の充実 学校の教育課程の展開に寄与する学校図書館の蔵書構築を進め、適切にその更新や廃棄を行いながら、子どもの実態に応じた様々な図書の整備に努めます。 また、図書館は学校図書館支援など学校との連携事業に取り組みます。 取組項目  一人一台端末を活用した電子書籍の導入  学校図書館の資料の充実  近隣校で学校図書館の相互利用の検討  図書館による学校図書館の図書選定支援、学校向け図書の貸出  学校や関係機関と連携し、児童生徒のニーズに合わせた支援事業を実施 2 読書への関心を高めるきっかけづくり 各校の実態に即して展開する各教科等における、様々な本や資料などから得た情報を活用する授業実践や国語の読書単元での学習活動、 学校の教育活動と図書とをつなぐ取組や読書機会の創出の好事例等を、市内においてデータベース化し、各校が参考とすることで 読書活動推進の機運をさらに高めます。 取組項目  学校図書館を活用した授業づくり  本の紹介を行う取組など本に親しむきっかけとなる取組  児童生徒同士が本を紹介し合う取組  「はまっ子読書の日」等による読書活動の推進 3 多様な子どもたちの読書機会の確保 学校図書館は、読むことに困難さを抱える児童生徒や外国語を母語とする児童生徒が手に取れる図書や、必要に応じてアクセシブルな図書を整備するなど、 多様な子どもたちへの読書機会を確保する工夫に努めます。(例 LLブック・点字・手話・多様性の本・マルチメディアデイジー用タブレット端末等) また、日本語支援拠点施設「ひまわり」や国際教室、中学校夜間学級など、日本語の指導が必要な児童生徒が読書に親しめるよう、学習に利用できる図書や、 母語で読むことのできる図書の整備に努めます。 図書館は、外国につながる児童生徒の読書活動を支援します。 取組項目  障害特性や発達段階に応じた読書環境の整備  図書館による学校への「母語セット」の貸出 4 子どもの視点に立った読書活動の推進 学校の児童会・生徒会活動等においても、子どもの目指す学校図書館像や取り組みたい読書活動の実現に向けた、多様な他者との協働、 自主的・実践的な取組、校種を超えた学校間での交流等、子どもからの声を積極的に活用する取組を実施します。 取組項目  子どもの意見聴取の機会の確保  図書委員が参画した読書活動推進の取組 5 子どもの読書活動を支える人材の育成 多様な子どもたちへの読書機会確保のために、研修実施や事例発信により、司書教諭や学校司書のスキルアップを図ります。 校内における連携・協働を基盤として、多様な他者との連携・協働および情報共有を図り、学校図書館の利活用推進と読書活動推進に生かすための 研修を実施します。 取組項目  学校図書館を活用した授業づくりや本に親しむきっかけとなる取組の先進事例の情報提供・情報共有  図書館と連携した読み聞かせや本の修理等の学校ボランティア向け講座の開催  図書館と連携した、司書教諭・学校司書に対する研修の充実 施策2 家庭・地域における子どもの読書活動の推進 ✦ 施策の目標・方向性 区役所、図書館、学校が連携して、子ども達のニーズを共有し、子どもたちが求めている企画を実施し、 子どもが読書を身近に感じることができる機会を創出します。 また、家庭における読書活動が促進される取組を進めるとともに、図書館をはじめとする身近な施設や地域において、 子どもが読書に親しみ楽しむことができる機会を創出します。 ✦ 現状と課題  子どもの頃(就学前から中学時代)に読書活動が多かった人は、大人になっても1か月に読む本の冊数が多い傾向があるとともに、 子どもに読み聞かせをするなど、読書活動を通じた子どもとの関わりが多いことが分かっています。 (国立青少年教育機構「子どもの読書活動と人材育成に関する調査研究」報告書(平成25年)) 令和6年度に行った市民アンケートでは、今の読書習慣の開始時期が早い回答者ほど、「週に数冊程度」の本を読む比率が高い傾向にありました。 また、今の読書習慣の開始時期が早い回答者ほど、「週に3~4回程度」以上子どもと読書する比率が高い傾向にありました。 子どもの頃に読書習慣を身につけることが、生涯にわたって読書に親しみ、読書を楽しむ習慣を形成する上で重要と言えます。 子どもが読書習慣を身につけられるよう、家庭での読書活動が促進される取組を行うとともに、図書館をはじめとする子どもにとって身近な場所(地域) において読書活動を推進する取組を行う必要があります。  乳幼児期から学齢期の子どもにとっては、身近な存在である保護者や、保育者等とともに読書に親しむことが有効です。 図書館では、乳幼児期の親子で参加するおはなし会の開催や乳幼児健診等を活用した0~3歳児向けのわらべうたや絵本を紹介したブックリストの配布など、 読み聞かせの大切さを伝える取組などを行ってきました。また、地域子育て支援拠点など地域の様々な施設においても、ボランティア等との連携による 読み聞かせ・おはなし会が行われており、今後も身近な地域での取組が充実するよう、支援を行っていく必要があります。  学齢期の子ども向けに、図書館では、小学校(低・中・高学年)、中学生等、それぞれの年齢・年代向けにおすすめの本のブックリストを 毎年度作成・配布しました。また、ホームページでの毎月のおすすめの本の紹介や令和5年度からはティーンズ向けにインスタグラムでの 情報発信を開始しました。今後は、デジタル媒体を活用した情報提供の充実が必要です。  図書館が実施した子育て世代向けアンケート(令和5年1月)では、子育ての中で、子どもの本選びに悩む声、おすすめの本を手軽に借りたいという 声が多く寄せられました。これを受けて実施した絵本の福袋などの企画は好評で、気軽に楽しく本が借りられる取組や、ホームページやSNS等を通じた 本の紹介などの情報提供を充実していく必要があります。  読書の楽しみを発信するとともに、多様な知や人・文化との出会いや体験を通して、子どもたちの「知りたい」「創りたい」を引き出すような取組が、 子どもの読書意欲の向上につながります。本と体験を通じて楽しく学べる機会を充実するためにも、子どもたちの発想や意見を生かし、 子どもが参画した取組を進めていくことが必要です。  国の「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」では、「多様な子どもの読書活動を推進するためには、多様な機関や人々の連携・協力が不可欠」 とされており、保育所、幼稚園、市民利用施設、ボランティア団体、大学、民間事業者など様々な主体との連携が求められています。 参考:乳幼児期の読み聞かせが、その後の読書活動に影響を与えるデータ 入学前の読み聞かせ日数別一日の読書時間(小学1年生~中学2年生追跡調査) 入学前に週4日以上読み聞かせ  小学1年 18.6分  小学2年 21.2分  小学3年 22.9分  小学4年 22.5分  小学5年 23.9分  小学6年 25.6分  中学1年 23.6分  中学2年 20.6分 入学前に週1~3日読み聞かせ  小学1年 13.4分  小学2年 13.8分  小学3年 14.4分  小学4年 16.1分  小学5年 17.1分  小学6年 19.7分  中学1年 15.8分  中学2年 13.7分  入学前に週一日未満読み聞かせ  小学1年 8.8分  小学2年 10.6分  小学3年 10.9分  小学4年 13.4分  小学5年 16分  小学6年 15.9分  中学1年 15.5分  中学2年 11.3分 ✦ 主な取組 1 読書環境の充実 図書館は、乳幼児期から小・中・高校生世代まで、子どもたちの年齢ごとの興味関心に応じた子どもの本を充実します。 また、子育て世代が図書館を利用しやすいサービスを検討します。 取組項目  図書館の子どもの本の充実  子どもと保護者が利用しやすいサービスや居心地のよい空間の提供  子育て世代に適した情報発信  デジタル技術等を活用した、読書に興味を持ってもらうための仕組みづくり  団体や企業等と連携した新しいサービスの提供 2 読書への関心を高めるきっかけづくり ➀ 乳幼児期 乳幼児がはじめて本と出会う場所として、子どもと保護者が読書に親しめる機会を提供します。 取組項目  子どもと保護者が楽しめるおはなし会等のイベントの充実  子どもの成長に合わせた年齢別のブックリストの提供と活用事業  手軽に借りることのできる乳幼児向け絵本セットの提供  地域子育て支援拠点との連携や育児教室などの機会を活用した子どもと保護者で本に親しむことの大切さを伝える取組の実施 3 読書への関心を高めるきっかけづくり ② 小・中・高校生世代 読書を通じて知識と体験をつなぎ、子どもたちの「知りたい」「創りたい」気持ちを引き出し、子どもたちの読書と学びを支えます 取組項目  学齢期に合わせたブックリストの作成(または提供)と活用事業  SNS等を活用した情報発信  読書の楽しさに関連した「知りたい」「創りたい」気持ちを引き出す体験型イベントの開催  小・中・高校生世代が参画する企画事業等の実施 4 多様な子どもたちへの読書機会の確保 読む・知る・体験することへのバリアを取り除き、多文化共生の視点も含めて多様な子どもたちのニーズに応じた読書機会を提供します。 取組項目  やさしい言葉で分かりやすく書かれた本やさわる本などを集めた「りんごの棚」の図書館全館での設置  多様な子どもたちを対象とした読書活動の推進  多言語の児童書やバリアフリー絵本などの充実 5 子どもの視点に立った読書活動の推進 子どもの視点に立った読書活動の推進の取組を行います。また、子どもが参画した読書活動事業を進めます。 取組項目  子どものアイディアを取り入れた企画事業等の実施  小・中・高校生世代が参画する企画事業等の実施 6 身近な地域における子どもの読書活動の促進 身近な市民利用施設や子育て関連施設等での読書活動を促進するため、子どもの本の選書支援やグループ貸出、協働・共創による子ども向け読書イベントの実施などに取り組みます。 取組項目  図書館の団体貸出、グループ貸出を活用した市民利用施設や子育て関連施設等への支援  市民利用施設や子育て関連施設等との連携による子ども向けの読書イベントの開催 7 子どもの読書活動を支えるボランティアの育成 図書館や市民利用施設等での読み聞かせなど、身近な地域における読書活動を進めるため、活動を支えるボランティアの育成・支援を行います。 また、読み聞かせ、朗読等ボランティアに対して、活動を行う場所や機会に関する情報提供などを行います。 取組項目  読み聞かせ、朗読等ボランティア向けサポートツールの作成・提供  生涯学習・市民活動支援センターと連携した、ボランティアへの活動場所の紹介 【コラム のげやま子ども図書館について】 令和6年1月に、野毛山地区の新たな魅力創出に向け、「誰もが学び、楽しみ、交流し、理解しあえるインクルーシブなまちづくりの展開」を エリアコンセプトとした「のげやまインクルーシブ構想」が発表されました。このコンセプトに基づき、中央図書館の1階を、親子連れや子どもたちが楽しく学べる、 居心地の良い「のげやま子ども図書館」としてリニューアルします。 乳幼児とその保護者が安心して遊び、絵本を読んで過ごすことができる「親子フロア」を、1階レストランフロアに先行整備し、 その後、1階図書館フロアを親子連れや子どもたちが楽しく学べる「子どもフロア」として整備します。 柱2 市民の読書活動の環境と機会の充実 施策3 利用しやすい図書館サービスの充実 ✦ 施策の目標・方向性 市民一人ひとりが読書に親しみ、必要な情報を得ることができる「知の拠点」として、図書館の蔵書、提供する情報を充実するとともに、 居心地よく過ごすことができる場を提供していきます。また、デジタル技術を積極的に導入し、図書館を利用したことのない方々にも 興味・関心を持ってもらうきっかけとします。 加えて、身近で便利な場所での図書館サービスの提供を進めます。 ✦ 現状と課題  図書館は、すべての人が知識や情報を得ることができる権利を保障する、大切な役割を担っており、楽しみのための読書を始め、 市民の調査研究や課題解決に役立つよう、すべての分野にわたって本や情報を収集・蓄積しています。図書館の蔵書は約410万冊ありますが、 今後も、各図書館が地域の特性を踏まえた特色あるコレクション(図書館が提供する蔵書や情報)を持ち、図書館全体として、 幅広くバランスの良い蔵書の構築と、活字だけでない多様な情報の収集が必要です。  電子書籍は、令和5年度末時点でコンテンツ数約1万5千点を提供し、令和5年度の年間利用件数は約16万件ありました。 また、開港期に発行された浮世絵や絵葉書などを画像データ化し、デジタルアーカイブ「都市横浜の記憶」としてインターネットで公開しています。 今後も電子書籍やデジタルアーカイブなど、24時間自宅などから利用できるサービスのニーズに応えるためにもコンテンツを充実していく必要があります。  本や情報の充実とともに、司書によるレファレンス、おすすめの本や課題解決に役立つ情報の提供など、本と人をつなぐための情報提供も重要です。 今後も、便利に情報が得られるようにホームページやSNSを活用した情報提供を一層進める必要があります。  令和6年1月に新しい図書館情報システムが稼働し、オンラインでのデジタル図書館カードの発行やAIによる蔵書探索など新機能を備えました。 デジタルを活用した情報サービスの充実にあわせて、市民の情報リテラシーの支援が重要になってきます。  図書館サービスへのアクセスを向上させるためには、図書館以外の場所で図書館の本を借りることができる図書取次所の拡充や移動図書館の 巡回場所の最適化などを進めていく必要があります。 ✦ 主な取組 1 市民の読書と課題解決に役立つ蔵書と情報の充実 中央図書館・地域図書館それぞれが、地域の特性を踏まえ、市民の読書や課題の解決に応える本やデジタル情報を収集し、図書館全体として、 幅広くバランスの良い蔵書を構築します。さらに、本や様々な情報を市民の皆様につなぎ、図書館との接点を増やすために、ホームページやSNS等の 多様な情報ツールを活用するとともに、関係区局や外部機関等との連携・協働により、課題解決に向けた情報発信や関連事業等を行います。 取組項目  地域の特性を踏まえた特色ある蔵書の充実  読書や調べものに役立つブックリスト・調べ方案内などの情報提供の充実  SNS等を活用した本や図書館の企画事業等の情報発信の充実  レファレンス事例集の充実  オンラインデータベースの充実  関係区局や外部機関等との連携・協働した地域の課題解決に向けた講演会・展示会等の実施 2 デジタルを活用したサービスの充実 デジタル技術を活用し、いつでもどこでも利用できる図書館サービスや読書活動につながる新たな仕組みを提供します。 デジタルコンテンツの充実を進めるとともに、デジタルコンテンツを利用するための情報リテラシー支援に取り組みます。 取組項目  電子書籍の充実  デジタルアーカイブの充実  手続きやレファレンスのオンライン活用の推進  蔵書検索や電子書籍の使い方講座等の実施  読書活動につながるデジタルサービスの提供 3 身近で便利な図書館サービスの拡充 図書館以外の場所でも、図書館の本を借りることができるよう、サービスを拡充します。 また、地域に出向いて図書館サービスを提供する移動図書館を活用した図書館サービスを提供します。 取組項目  図書取次所の拡充  移動図書館の定期巡回と地域のイベント等への特別運行の実施 施策4 読書に親しみ楽しむ機会の充実 ✦ 施策の目標・方向性 図書館でのイベントの開催等のほか、市民利用施設、書店など地域の様々な主体と連携し、読書に親しみ楽しむ機会となる取組を充実していきます。 また、本には、人と人とがつながり、新たな活動が行われる可能性があることから、本を介した交流や学びあいを促進する機会をつくります。 ✦ 現状と課題  国が全国の16歳以上の男女を対象に実施した調査では、1か月に1冊も本を読まないと回答した割合が62.6%と、 半数以上の人が1か月に1冊も本を読んでいない状況です。普段読書をしない方に、読書への関心を高めていただける機会をつくることが求められています。 1か月に読む本の冊数 読まない 62.6% 1.2冊 27.6% 3.4冊 6.0% 5.6冊 1.5% 7冊以上 1.8% 無回答 0.5% 「国語に関する世論調査」(文化庁) 調査年:令和5年 対象:全国16 歳以上の男女  第31期横浜市社会教育委員会議からは、「本を読み、その体験を語り合う場はいわゆる「地域の居場所」「人と人との交流の場」として大きな可能性があり、 このような場をさらに充実させていくことが地域のコミュニティづくりに寄与する」との提言がなされ、本や読書を介して人と人がつながるような取組が 求められています。  「横浜市図書館ビジョン」では基本方針3まちとコミュニティのための図書館として、「市民、団体、企業等が持つ情報・知識を集め、協働・共創により 地域の魅力を引き出し、人々の暮らしの豊かさと地域の課題解決を支援する、まちづくりのプラットホームになる」ことを目指しています。 図書館は本と出会う場であるだけでなく、交流や学びあいの場としての役割も担っていくために、協働・共創を進め、 地域の情報の発信と交流を生み出す取組を進める必要があります。 地域特性に応じたニーズを捉え、効果的な読書活動推進の取組を進めるために、区は、第二次読書計画に引き続き市民利用施設や読書活動推進団体等との 効果的な連携を行う必要があります。「読み聞かせ、朗読等ボランティアの活動人数(図書館と連携した事業)」は、平成 24 年度以降、増加傾向にありましたが、 令和元年度以降は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により減少しています。読み聞かせ等のスキルアップのための講座の開催や、 ボランティア活動を行う場所や機会に関する情報提供などの支援の重要性が高まっています。 ✦ 主な取組 1 本と出会う機会の創出 全市的な取組として、民間企業・書店など地域の様々な主体と連携し、読書に繋がる多様なきっかけを提供します。 区では、イベントの開催のほか、区内の本を利用できる場所等を紹介する取組を行います。 取組項目  読書イベントの開催  読書の日(毎月23日)、読書活動推進月間(11月)に合わせたイベント等の開催  読書活動推進月間の広報・啓発活動の拡充  区の読書マップなど本にふれる機会となる場所等の紹介  「二十歳の市民を祝うつどい実行委員会」と連携した本と出会う機会の創出 2 本を介した交流や学びあい 本には、人と人とがつながり、新たな活動が行われる可能性があることから、本を介した交流や学びあいを促進する機会をつくります。 取組項目  本を介した交流を生み出すイベントの開催  市民、団体、企業等と連携・協働したまちの魅力発見イベントの開催  オンラインサービスの充実による新たな本の出会いや交流機会の創出  シニアに役立つ情報の収集や学びの機会の提供 3 身近な地域における読書活動の促進 地域全体で効果的な読書活動推進を図るため、市民利用施設や読書活動団体等との情報交換の場や機会を設け、地域における連携を進めます。また、市民、団体、企業等との協働・共創による地域の読書活動推進の取組を進めます。 取組項目  市民利用施設や読書活動団体との連携のための情報交換の場や機会づくり  市民利用施設等における読書活動への支援(グループ貸出、選書情報の提供など)  市民利用施設等との連携による読書イベントの開催  ボランティア団体、大学、企業など多様な主体と連携した読書活動の推進  国際交流ラウンジ等と連携し、多文化共生を進める読書活動の推進 4 読書活動推進を支えるボランティアの育成 身近な地域における読書活動を推進するため、図書館、市民利用施設等で活動する、読み聞かせ、朗読等ボランティアの育成・支援を行います。 取組項目  読み聞かせ等ボランティアの育成・支援  生涯学習・市民活動支援センターと連携したボランティアへの活動場所の紹介  読書活動推進団体、ボランティア交流会等の実施 【コラム 読書の多様な楽しみ方について】 読書には多様な楽しみ方が存在します。 市民アンケートで読書の多様な楽しみ方についての経験の有無を聞いたところ、「知人や家族と読んだ本について話す」の比率が最も高く(76.7%)、 「おはなし会や朗読会に参加する」(27.4%)、「読書ノートや読書管理アプリに記録する」(17.7%)との回答が続きました。 市民ワークショップでは、「誰かと一緒に読む」という行為は、普段馴染みのない分野や難易度の高い本を読むきっかけにもなるとの意見がありました。 また、読書ノートについて、ノートの活用、スマホのメモ機能の活用、PCでの記録など様々なやり方で読書ノートをつけている声が挙げられ、 SNS(X)に読書記録を投稿し、色んな方と交流するという楽しみ方を実践している方もいました。 「他の人との交流は、個々の読書生活を見直したり、広げたり、深めたりするために必要不可欠な過程(※)」とも言われています。 本市では、複数の区が読書ノートを作成しており、ホームページからダウンロードすることもできます。多くの市民の皆様に、 読書を様々な形で楽しんでいただけるよう、取組を進めてまいります。 ※参考文献 杉本直美.読書生活をひらく「読書ノート」.全国学校図書館協議会,2013,53p 柱3 読書バリアフリーの推進 施策5 読書バリアフリーの推進 ✦ 施策の目標・方向性 視覚障害者等(視覚障害、発達障害、肢体不自由その他の障害により、書籍について視覚による表現の認識が困難な方)の読書環境の整備に取り組みます。 ✦ 現状と課題  バリアフリー図書の製作は、主に図書館等が養成した図書館協力者やボランティアが担っていますが、担い手の高齢化などの課題があり、 製作人材の確保が必要です。製作人材の確保にあたっては、ボランティアのみに頼ることなく、様々な方策の検討が求められています。  一人ひとりのニーズに応じた支援を行うためには、障害特性と障害者サービスの内容を理解し支援方法を習得することが重要です。 また、人材育成の対象は、図書館司書、司書教諭、学校司書に加えて、視覚障害者等と接する図書館や学校に関わる人たちにも広げる必要があります。  視覚障害等により読書や図書館利用を諦めてしまっている人に対する働きかけも求められています。  読書バリアフリーに関連する制度やサービスなどの各種支援情報は点在しているため、視覚障害者等が必要な情報にたどり着くまでに相当な時間を要し、 十分に情報が行き渡っていない状況にありました。そこで、令和5年度に、読書バリアフリーの情報を一元化したサイトを開設し、周知を行いました。 引き続き、必要とする人に的確に届くための効果的な広報・啓発が必要です。また、図書館における活字資料での読書が困難な人へのサービスの対象に 新たに加わった、発達障害、肢体不自由の障害者等に情報が行き渡るよう配慮が必要です。  本市では、視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の購入や製作に引き続き取り組みます。 ✦ 主な取組 1 読書バリアフリーの基盤づくり 図書館、学校図書館でのバリアフリー図書、読書支援機器の拡充や、円滑な図書館利用のための合理的配慮を行います。 取組項目  図書館、学校図書館における録音図書等や読書支援機器の購入  図書館によるバリアフリー図書の学校図書館への貸出  点訳・音訳奉仕員の育成  視覚障害者等の読書環境整備に必要な用具の給付  学校図書館における、児童生徒、教職員のニーズ等に応じた円滑な図書館利用のための支援 2 バリアフリー図書の製作 バリアフリー図書の製作にあたっては、図書館協力者やボランティアに加えて、民間事業者等との連携・協働等による製作に取り組みます。 取組項目  バリアフリー図書の製作に向けた出版社や大学等への働きかけ  障害者就労施設等と連携した図書館におけるバリアフリー図書の製作  バリアフリー図書(デイジー図書)製作人材の育成 3 視覚障害者等向けインターネットサービスの利用促進 全国の点字図書館、公共図書館で製作された視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等が集約された「サピエ図書館」や「国立国会図書館」の インターネットサービスの利用支援に取り組みます。 取組項目  インターネットサービスの操作方法、検索方法などに関する相談対応、講習などの支援  学校における、司書教諭、学校司書などへの研修等を通じた、児童生徒のインターネットサービス利用支援 4 図書館職員、司書教諭、学校司書等の人材の育成 読書に困難のある方の一人ひとりのニーズに応じた支援を行うことができる図書館職員、司書教諭、学校司書等を育成します。 取組項目  図書館における職員の人材育成のため、視覚障害者等との交流や読書支援機器の操作体験など、障害特性の理解促進や支援方法を学ぶための取組  学校における、司書教諭や学校司書をはじめとした教職員に対する研修や先進事例の共有、視覚障害者等との交流など、障害特性の理解促進や 支援方法を学ぶための取組 5 効果的な広報・啓発戦略 読書バリアフリーに関する情報にアクセスしやすくするために、必要な人に情報が行き渡るように的確な広報を行います。 また、障害の有無に関わらず市民が読書バリアフリーの理解を深め、助け合い・支え合いの機運を醸成するために各種啓発活動を実施します。 取組項目  支援情報を集約したホームページを活用した横断的な庁内支援体制の整備  視覚障害者等が日頃よく利用する施設や機関などでの幅広い広報、視覚障害者等への情報提供に関する支援者への働きかけ  図書館、学校での知識や情報を得る機会の充実  身近な施設や地域イベント等での、バリアフリー図書を体験する機会の提供や読書バリアフリーへの市民理解の促進  児童生徒同士の支え合いに関する理解の促進